水原被告の「前提」が
大崩れした瞬間
その瞬間、水原被告の書簡の中で綴られていた「自分が経済的にカツカツだった理由は、大谷選手の住まいの近くに住んで24時間体制で彼をケアしなければならず、高い家賃を払うしかなかったからだ」という前提があっさり崩れてしまった。
日々の支出の中で最も大きかったであろう「高級住宅地での家賃」を一体どの程度の期間、いくら大谷選手に負担してもらっていたのか、そこが「困窮状態」を説明するキモだと思うのだが、フリードマン氏からは何の説明もなかった。
さらにホルコム判事はこう質問した。
「ミスター大谷からミスター水原にポルシェが提供されていたそうだけど、そのポルシェの値段は?」
その途端、フリードマン氏が言葉に詰まった。そして水原被告と何か話した後に「値段は今すぐにはちょっとわかりませんが、SUVタイプだったので、クラシックなコンバーティブルタイプよりは安いと思います」と返答した。
「そのポルシェは今どこにあるのか?」。判事はさらに問う。
「もうミスター大谷側に返却したと聞いています」とフリードマン氏。
このやりとりで露呈したのは、フリードマン弁護士は、依頼人である水原被告の経済状況をそれほど細かく知らないということだった。
水原被告本人が記した書簡の中には、大谷選手本人から個人的に支払われた報酬は「シーズン中で月に2万円、シーズンオフで月40万円」と具体的に書かれているのに、家賃や航空券などの支出の明細金額が一切書かれていない。
その点を突っ込まれるだろうことを、ベテラン弁護士のフリードマン氏は想像しなかったのだろうか?
それまで穏やかに質問していたホルコム判事は「率直に言って、ミスター水原の書簡の記述はmisleading(誤解を与えるものだ)し、事実のomission(省略)が多い印象だ」と言った。
するとフリードマン弁護士はこう返した。