高額化する医療費を賄うための
公的医療保険制度の対処策は?

 70歳以上の人の高額療養費には、収入が一定額以下の人への外来特例が残され、現役世代に比べると負担軽減の配慮はある。だが、今回の見直しは、年齢に関係なく経済的な負担能力によって負担を求める内容になっているので、高齢者でも高所得層は現役世代と同じ引き上げ額になる。高齢になると、病気やケガをして医療を受ける確率は高くなる。特に、がんなどで継続的な治療が必要な患者にとっては、家計へのダメージは避けられないだろう。

 高額療養費の見直し案が発表されてから、がんの患者団体や医療者団体などが負担軽減や影響緩和を訴えたことで、国は長期療養している患者の負担に配慮した修正案の検討し始めているという。

 そもそも、公的医療保険は、病気やケガをしても医療費の負担によって貧困に陥ることがないように、患者やその家族の生活の安定を図るためにつくられた制度だ。たんに病気やケガの保障を行うだけではなく、社会を安定させるための大きな役割を持っている。

 社会保障の網の目からこぼれる人が出ないように、この国で暮らすすべての人に公的医療保険への加入を義務づけ、日頃から保険料を納めることで、病気やケガをしたときには少ない負担で医療を受けられるようにするというのが制度の趣旨だったはずだ。

 それなのに、医療費が100万円かかっても高額療養費が適用されず、毎月30万円ずつ支払い続けなければならない人が出るような制度は、もはや「保険」とは言えない。

 一方で、高額医薬品の登場や医療技術の進歩によって、公的医療保険制度が始まった頃には想像もつかないほど、医療費が高騰しているのは事実だ。高額化する医療費に対応するには、財源の底上げが必要になるが、保険料や自己負担額の引き上げだけでは対応が難しくなってきている。

 公的医療保険制度を持続可能なものにしていくためには、診療報酬制度や薬価の仕組みに切り込む大胆な見直しも必要ではないだろうか。