半導体の重要性は近年増すばかりですが、大量の半導体を必要とする生成AIの普及により、政治的にも経済的にも一層の注目を集めることになりました。一個人にとっても、今や半導体についての知識はビジネスや投資で成功するために欠かせないものとなっています。
この連載では、今年1月に新たに発売された『新・半導体産業のすべて』の一部を抜粋・編集し、「3分でわかる世界の半導体企業」をコンセプトに紹介していきます。今回は、マスク検査装置で世界第2位の日本企業、「レーザーテック」について解説します。

レーザーテックPhoto: piter2121/Adobe Stock

EUVマスク関連検査装置の世界シェアを独占

レーザーテック
売上高 1528億3200万円(2023年)
従業員 425名

 レーザーテックは、1960年に医療用X線テレビカメラ装置の設計開発を行なう東京ITV研究所として設立され、1986年にレーザー顕微鏡を皮切りに、DUV/EUV光学系技術を生かし、欠陥検査・計測を行なう検査装置メーカーとして、横浜市港北区に本社を置いています。

「その時代にないものを開発する」という理念のもと、売上の10%を研究開発に向け、従業員の80%近くがエンジニアという、研究開発に特化した企業です。同社は最小限の製造装置をもつだけで、需要拡大時には外部のファウンドリー企業に製造を委託する、いわゆるファブライト企業です。

 レーザーテックは、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)向けの検査装置や計測装置、顕微鏡などの製品を扱っていて、マスク検査装置ではアメリカのKLAに次いでシェア36%(世界第2位)の位置にあります。

 レーザーテックは、その従業員数に比べて売上高や時価総額からも超優良企業であることが窺えます。特に、2019年から始まった最先端半導体を製造するためのEUV露光技術の普及・拡大に伴い、EUVマスク関連検査装置で業績を伸ばし、当該装置の世界シェアはほぼ100%という、独占状態にあります。直近の2024年6月期の連結売上は1900億円(前年同期比24%増)、純利益470億円(同2%増)と、半導体製造装置メーカーの多くが減収減益の中で健闘しています。

 レーザーテックはマスク全般にわたる検査・計測を行なう製品(EUV用マスクブランクスの欠陥検査装置、ビューステーション、パターン欠陥検査装置、マスククリーニング装置など)を提供していて、3nmプロセスノードまでの対応が可能です。今後、EUV露光で作製される先端半導体製品が増えるにつれ、さらにレーザーテックの検査装置の需要が増えていくでしょう。

 またEVなどの普及に伴い、パワーデバイス向けSiC(シリコンカーバイド)などの半導体材料が注目されますが、この分野の検査装置でも高いシェアを持っています。

 同社の将来性に関しては、ニッチトップの製品を多く抱えている限り、それほど心配ないと思われますが、この分野の世界的トップランナーKLAの追撃をかわし切れるかどうか、それがポイントになるでしょう。