シティコミューター用途のサクラは
遠乗りには向いていないが不可能ではない

 野沢温泉を出ると前夜の吹雪から一転、おおむね好天に恵まれ、路面コンディションは一部区間の圧雪・凍結路を除きほぼウェットとドライ。飯山市で20分充電し、充電率69%でスタートした。

 その後は新潟・津南町(53.1km走行。15分充電で16%→54%)、六日町(31.7km走行。15分充電で22%→62%)、越後湯沢(22.7km走行。10分で36%→63%)、群馬・月夜野(48.2km走行。15分で15%→57%)、伊勢崎(57.7km走行。15分で13%→54%)、埼玉・蓮田(55.6km走行。15分で9%→49%)と小刻みに充電しながらゴールを目指した。電費低下で航続距離は短くなるが、充電速度が温暖期とほとんど変わらないのはサクラの美点である。

 小容量バッテリーカーで留意すべきことに、標高差がある。帰路も往路と同じく国道17号新三国トンネル越えのルートを取った。が、同じ山越えでも関東から北陸と、その逆方向では状況が異なる。前者は標高400m弱の月夜野に充電スポットがあり、トンネルまでの距離は約25kmなので大した問題もなくクリアできた。

 しかし、逆ルートは六日町からだとトンネルまで標高差900m、距離は約50kmもある。冬ドライブだと平地であっても充電率1%あたり1km少々を消費する。ということで、標高をある程度稼いだ越後湯沢で10分追加充電した。63%で越後湯沢を発ち、トンネル到着時のバッテリー残量は19%。充電していなければ危なかった。小容量バッテリーBEVで遠出をする場合、地理感覚が非常に大切になる。

 最後の充電区間は埼玉・草加から横浜までの63.9km。この区間はエコドライブを行ってみた。エアコンの設定温度は18度。サクラのヒーターは結構強力で、送風口からは熱風が出てくる。足元と上半身の両方に当たるよう調節すれば十分暖かい。

 市街路のみの走行で平均車速21km/h、気温7度の条件下で、電費は9.8km/kWh、充電率の変動は48%→8%だった。100%換算の航続距離は159.8km。バッテリー実質容量が16kWh強に過ぎないサクラの冬季スコアとしては、十分にアクセプタブルな数値であろう。

 サクラで963km雪道ドライブ。後半の印象をまとめると、

1.深雪、シャーベットなどの悪コンディション下では航続距離が極端に短くなる(充電率1%あたり0.6km前後)ため綿密な充電計画を立てる必要あり。
2.寒冷環境下での充電速度の低下は最小限。一度バッテリーが温まればマイルドシーズンと変わらないペースで充電可能。
3.下り坂では減速発電で航続を稼げるのがBEVの特徴だが、上り勾配を登りきれなければ意味がない。標高差の大きなルートは要注意。
4.暖房を使ったビバークは消費電力量が大きい。立ち往生の恐れがあるときは毛布、寝袋などの準備が必須。

 そもそもシティコミューター用途に最適化されたサクラは、遠乗りには向いていない。が、ドライバーに時間と冒険心さえあれば、最も苦手とする冬でも遠乗りが不可能というわけではないことが分かった。

 航続力と並ぶ難点は、充電費用が中大型BEVに比べて高くなる点だ。が、これは充電料金が時間課金であるためで、将来的に1kWh当たりの従量課金になれば解消されるだろう。日産は経営難が取り沙汰されているが、今後は他社も含めて小型BEVをどのように進化させていくのか興味深い。