社会人になっても勉強を続ける。居住地や勤労時間に捉われず、自分に適した形でスキルアップを図っていく。そういう意識の高いビジネスパーソンが増えているが、彼らを後押しするのが、多様化するオンライン学習サービスだ。
高等教育のプログラムを無償で公開するオープン・コース・ウエア(OCW)は、2000年にマサチューセッツ工科大で始まった取り組みだが、近年は日本の大学も続々と参加。東京大学のOCWでは、膨大な講義映像をキーワード検索することができ、ビジネスパーソンの受講も多い。
小欄でも「Studyplus」や「U-NOTE」といったオンライン学習サービスを紹介してきた。ITや語学分野では、ネットを活用して自分のペースで学習していくスタイルが、すっかり定着してきたと言えよう。
手法が多様化していくに従って、学びの面でも様々なサービスが登場し、活況を呈している。OCWのように世界に広がるものもあれば、身近で気軽に実践できる学習も、また人気を呼んでいる。
「StreetAcademy」(ストリートアカデミー)は、個人が持っているスキルや知識をシェアできる“社会人教育のマーケットプレイス”である。
Facebookのアカウントがあれば、だれでもレッスンやワークショップを立ち上げることができるこのサービス、手軽さも手伝って、2012年8月のリリース以来、順調な伸びを見せている。登録者は開校8ヵ月め(4月17日現在)で1万2000人を超え、講座数もすでに150、何度もリピート開講する“パワー講師”も生まれている。
人気があるのは、「3時間で学べるプログラム入門」といったIT関連や、「朝活!ビジネスイングリッシュ」「TEDを使った実践的英語学習法」などの語学講座。ユニークなところでは、「レゴでクリエイティビティ思考を鍛える」と題したワークショップもビジネスパーソンに人気だという。
従来の告知サイトと異なり、講師のプロフィールやレッスン履歴、受講生の感想など、その講座に関する情報を横断的に見られるのが特徴だ。告知ポータルであるとともに、教える側と学ぶ側が、学びを通してゆるやかなつながりを形成していく、そんなコミュニティサービスという側面を併せ持っている。
何かを教えてみたいとレッスンを開講する場合、初心者が最も苦労するのは集客である。自分の魅力やスキルを的確に表現し、学びたい人にリーチする。そういったノウハウは何かと難しいものだ。
そこで、「StreetAcademy」では、集客のためのプロデュースにも力を入れている。例えば、コンセプトが曖昧な場合は、講座の内容自体を助言したり、ネーミングやコピーの書き方、会場の提案なども積極的に行っている。
また、地域のカフェやコワーキングスペースと協力し、ともに集客を行うというコラボレーションにも取り組んでいる。さらには、空きスペースのマッチングサイト「軒先com」と業務提携を行い、レッスン会場として空き物件を活用していく試みも展開中だ。
「それぞれの地域で草の根コミュニティを作り上げるというかたちでやっていきたいと考えています。弊社が地域展開を進めていくというよりは、『みんなでスキルを共有し、学びのコミュニティを地元で作りたい』――そんな声のある地域へ展開していきたいと考えています」(IntheStreet 代表藤本崇氏)
現在は首都圏のみの展開だが、半年以内の全国展開を目指しているという「StreetAcademy」。その土地土地で、高齢者と若者が自然に学びを共有できる場を作っていく、“学びのロングテール”を目標に掲げている。オンラインとリアルの場でのコミュニケーションを、バランスよく取り入れていくことが、これからの上手な学習スタイルになるのかもしれない。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))