F:鈴木さんがいまおっしゃったお話は、スズキという会社が具体的に掲げている命題なのですか?例えば、修会長(鈴木修会長は、このインタビューの翌々日に亡くなられた)の大号令があったりするのですか。
鈴:大号令というか、会社の文化みたいなものですね。社内的なプレッシャーではないのですが、みんなが当たり前にやるべきことだと思っている。クルマを軽くすることが、スズキのDNAになっているのだと思います。この辺の僕らの感覚は、おそらく他社さんからしたら異常に見えるかもしれません。
スズキ車の本気の軽量化は2010年頃から~先代アルトは60kg軽量化した
F:これはいつ頃からですか?大昔から?
スズキ広報・井門氏:昔からこの感覚はありますが、本当に一気にダイエットが進んだのは、2010年くらいからですね。
鈴:先代のアルトを出した頃からですね。
スズキ広報・井門氏:先代アルトは、先々代から60kg軽量化したのですが、「もともと軽いアルトでさらに60kgって、どこ削ったんや?」と社内で盛り上がっていた覚えがあります。
鈴:先代のアルトを出したのが2014年。そのときに軽のプラットフォームを刷新しています。そう、「HEARTECT(ハーテクト)」と呼ばれるものです。その時に本当にみんなで「何取れる?何削れる?何薄くできる?」というのをものすごい勢いでやったんです。それをベースにスペーシアを造ろうとした時にはもう柔らかすぎて、「いや、困ったな」と。
アルトのように折角の多いクルマは薄い鉄板でも構造上強靭になるが、箱車で折角が少なく、しかもスライドドアとリアゲートがあって開口部の大きなスペーシアのようなクルマは、どうしてもねじれ剛性が弱くなる。
鈴:それでも重いクルマをベースにやろうとしたら、恐らくそういう視点もなく、重いスペーシアになってしまったと思うんですよ。「何取れる?何削れる?何薄くできる?」で造った軽の財産があるのだから、それを最大限に生かしてクルマを造ろうぜ。そうじゃないとスズキの軽じゃないよな、と。