「右ハンドルで車検あり」が
日本車に対する追加関税の理由に?

 トランプ政権が予想を上回るペースで関税政策に取り組んでいる。鉄鋼・アルミに対する関税賦課の発表に続き、2月13日、トランプ政権は「公平で相互的な貿易取引計画」に関する大統領覚書を発布した。

 この覚書には、外国が米国製品にかけている関税と同水準まで関税率を引き上げる「相互関税」の導入が明記された。4月1日までに調査を終え次第、即刻、実施すると予告している。

 相互関税とは、貿易の公平性を保つため相手国に対等の負担を求める関税をいう。自動車の場合、現在、EU(欧州連合)の関税率は10%、米国は2.5%、日本は0%だ。トランプ政権は、相手側と同じ水準に関税率を引き上げるか、米国と同水準までの引き下げを個別に求めるだろう。

 今回の大統領覚書は、規制や輸入手続き、さらには消費税などの「非関税障壁」の調査も指示した。主に、各国独自の規制、(米国が不公平と見なす)補助金、付加価値税、為替レートの管理が該当する。トランプ氏はEUを名指しで批判し、「付加価値税は関税より懲罰的」と指摘した。

 米独立系の税制調査機関であるTax Foundationは、「付加価値税は関税ではない」と明記している。WTO(世界貿易機関)は、主な非関税障壁として付加価値税を記載していない(2月15日時点)。

 付加価値税は、導入国にとって通常の税制だ。仕向け地主義(消費する国で課税する考え)に基づき、輸出を免除する一方で輸入に課税する。わが国が税と社会保障の一体改革で消費税率を引き上げたように、付加価値税を導入する狙いは各国で異なる。

 トランプ氏は、それを相互関税の調査対象に含めた。交渉相手にやや強引に圧力をかけ、米国第一主義を目指す考えはかなり強いようだ。

 4月2日にも輸入自動車への関税を発表する考えも表明している。トランプ氏はドイツ車の輸入が多いことに不満を示しているが、相互関税の調査対象国にはわが国も含まれている。「右ハンドル仕様、車検という日本独自の検査制度が米国車の参入を妨げている」として、日本車に対する追加関税を米国政府が発表する可能性は高いだろう。