ネイルサロンの市場規模は
前年に比べて大幅に拡大

 このように、コロナ禍前半のダメージが大きかった小規模業者の経営破綻が相次いでいるが、ネイルサロンの市場自体はコロナ禍による需要急減を乗り越え、堅調に拡大を続けている。ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、2024年のネイルサロンの市場規模は推計1390億円にのぼり、前年比16.3%増と大きく拡大した。

 従前から顧客ターゲットだった女性を中心に、利用金額や回数が拡大したほか、韓流アイドルの影響などから気軽にネイルデザインを楽しみたいライト層、身だしなみとしてネイルケアを行う男性利用者の割合が拡大していることも、市場規模を押し上げた要因とみられる。

 足元では、安価で手軽なセルフネイルキット製品の普及や、設備が充実したセルフネイルサロン店舗といった新業態店のオープンも進んでいる。多様な顧客ニーズに対応できる独自のサービスや高い技術力、SNSを通じた効果的な情報発信などを通じて、フルサービス型のネイルサロン独自の優位性をどこまで訴求できるかが、これまで以上に重要となる。

 他方で、キットなどを除けば特別な機器や資格が必要ないネイルサロン業態は、省スペースかつ低資金で開業できることから、参入障壁が比較的低いビジネスのひとつといえる。このため、大手から中小の美容関連企業のほか、個人で独立したネイリストが相次いでネイルサロン市場に参入し、競争は激化の一途をたどっている。

 こうした環境に加えて、施術が長時間に及ぶネイルには、細かい作業を長時間続けるための高い集中力と体力が求められることから、施術スタッフが定着しづらいといった人材面の課題を抱えている。

 このため、集客力があっても施術数を増やせずに収益確保がままならないネイルサロンや、リピーターや新規顧客の獲得をめぐって競合店との激しい競争に晒された小規模なネイルサロンを中心に、事業を断念するケースが目立つ。

 また、コロナ禍前半の急激な客足減により経営体力を消耗させ、ゼロゼロ融資などを受けることでなんとか一息ついたネイルサロンも少なくない。とはいえ、経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)な業者も多く、今後の金利上昇下における返済局面でいかに資金を確保するかが、事業継続に向けた大きなハードルになりそうだ。

 多くの企業が年度末を迎える3月は、年末の12月と並んで、1年で最も倒産が発生する月のひとつである。足元の企業倒産件数は2022年5月から2025年1月まで「33カ月連続」で前年同月を上回り、「戦後最長の連続増加記録」を更新中だ。ネイルサロンにおいても、物価高、人手不足、ゼロゼロ融資の返済負担などの影響を受け、事業継続を断念する小規模業者の倒産が2025年も高水準で推移していきそうだ。