先の見通しが、リーダーには必要
情報の出し方も大切

 私は彼らに、「自分たちが各自の製造現場で何を思い、何を目標とし、何をしているかを、そのまま話してほしい」「君たちがやっている酒造りについて自信をもって話すだけで、お客様に大きな感動を与えます」と伝えました。

 こちらからメンバーを選ばずとも、相思相愛みたいな人たちが集まって来るんです。話してみて何となく波長が合うとか、この人の言うことは分かるなとか、仕事の好き嫌いが合うといった感覚だと思います。

 そのような人たちを巻き込んでいくには、情報の出し方も大切です。キーになるこの人とこの人には、前もって話しておかなきゃいけないとか、同志になってもらわなきゃいけないとか先の見通しが、リーダーには必要です。

 2・6・2の下の2割の人たちについて言えば、良いと評価した人間を採用しているわけなので、最初から下の2割なのではありません。蜂の中にも働くのと働かないのがいて、働く蜂だけ集めても、やっぱり2・6・2に分かれると聞きます。それが自然界の法則なんでしょう。

 やる気のある上の2割にだけ説明すればいいと言うと、残りの8割を切り捨てているように見えますが、仕事を動かしていくときはそういうものだと思います。組織全体が上手く回って成果が上がれば、下の2割の人たちも努力以上に優遇されます。だから、特に気を遣う必要はないんです。

「部下を味方にできるリーダー」と「孤立するリーダー」の決定的な違い桜井博志/1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。家業である旭酒造は1770年創業。1973年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、酒造りの方向性や経営をめぐって先代である父と対立して退社。79年に石材卸業の櫻井商事を設立して集中していた。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建をはかる。2000年頃から海外販売を開始。23年には米国ニューヨーク州で酒蔵を開業。米国ブランド「DASSAI BLUE」生産の陣頭指揮を執っている。