ウクライナを見捨てた
3つの理由
トランプ氏が就任以来、実行してきた施策には、「?」をつけたくなるものが多い。なかでも、2月28日、ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領をバンス副大統領とともに面罵した光景は、これまで「トランプ氏なら世界のこう着状態を打破できる」と期待してきた筆者ですら目を疑いたくなった。
ただ、「なぜ、そうしたのか?」をじっくり考えれば、ターゲットを中国に絞り込みたいトランプ氏と、バンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官、それにマイク・ウォルツ大統領補佐官(安保担当)らトランプチルドレンの狙いが透けて見えてくる。
具体的には下記の3つが挙げられるだろう。
(1)太平洋を中国に支配されたくない
先に述べた石破首相との日米首脳会談が丸く収まったのは、対中強硬派のルビオ氏やウォルツ氏らが、台湾有事を念頭に、日本が果たす役割や日本を含めた日米豪印の枠組みがいかに重要かを説き続け、トランプ氏がそれを理解した結果。中国が台湾を支配するようになれば、東シナ海や南シナ海はおろか、グアム海域も危うくなるため。
(2)中東に兵力を割きたくない
2月4日、トランプ氏が、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争で荒廃したパレスチナ・ガザ地区を「アメリカが所有する」と言い出し、後に、ガザ地区にトランプ氏直系のホテルを建てるなどリゾート化したAI動画をSNSに投稿したのは、イランの介入などを招く前に紛争を終結させ、「対中国」に専念したい気持ちの表れ。
(3)中国からロシアを遠ざけたい
ウクライナ戦争の和平をめぐり、トランプ氏がロシアのプーチン大統領とだけ交渉を進めているのは、プーチン氏と良好な関係を築くことでロシアを中国から引き剥がしたいから。また、メディアの前でウクライナのゼレンスキー大統領を「あなたはカードを持っていない」「あなたが取引に応じなければ我々は手を引く」などと罵倒したのも、どんな形であれ戦争を終わらせ、中国の動きに備え、兵力と戦費を一極集中させたいから。