
中国のメンツを潰した
トランプ氏の施政方針演説
日本時間の3月5日、アメリカのトランプ大統領が全米に向けて行った施政方針演説。前日、カナダとメキシコに25%の関税、そして中国に10%の追加関税を賦課したトランプ氏は、中国などを名指ししてこのようにうたい上げた。
「我々が課しているより高い関税を課している。関税がアメリカの魂を守る」
中国・北京では全人代(中国の国会にあたる全国人民代表大会)が開幕した日で、全土から代表者が続々と集まっている中での演説である。
習近平国家主席にとっては、景気刺激策など今後1年間の基本方針を打ち出す政治的儀式を前に、出鼻をくじかれる形となった。
振り返れば、2月7日、中国北東部の都市、ハルビンで開幕した「スポーツの祭典」、冬季アジア大会でもそうだった。
習氏は王毅外相を通じ、大会の開会式に石破茂首相を招待する考えを伝えていたが、トランプ氏が石破氏をホワイトハウスに招き、同じ日に首脳会談をぶつけてきたことで頓挫している。
トランプ氏は大統領就任前の1月17日、習氏と電話会談し、その直後、SNSに「習主席と私は、世界をより平和で安全なものにするために何でもする」などと投稿したが、就任わずか40日ほどの間に2度も習氏のメンツを潰したのである。
中国語でメンツ(面子)とは、単に面目とかプライドという意味以上に、その人の能力や社会的地位を指すことが多い。言い換えるなら、人としての「強さ」であり「大きさ」なのだが、4年ぶりにホワイトハウスに返り咲いた「暴走老人」は、習氏自身が誇りにしてきたであろう「強さ」と「大きさ」をコケにしたわけだ。