バッテリー変更に伴い、ほぼ全面的に造り直しに

F:大きくなって、重くなって、総電力量は22.7kWhでしたよね?

五:はい。容量も大きくなりましたが、何よりも取り出せる出力も大きくなりました。だから今までのマッピングデータは全て書き直しです。四駆の部分を全部見直さなきゃいけないので、S-AWCのパラメーターも全部やり直しです。

F:全部、ですか?

五:はい。全部です。すべて書き直しです。さらにそれに伴ってタイヤも開発し直してもらい、足回りのセッティングも変えました。バネは重量アップと乗り心地を高めるためにバネレートを変更し、ショックアブソーバーは、ハンドリングと乗り心地を両立するために内部バルブ構造のセッティングを変更しています。燃料タンクも容量が変わったのでイチから設計し直しですし、同じく容量が変わったので、電池パックも全部造り変え。ボディに関してもそうです。パッと見はマイナー後も同じように見えますが、外装も実は造り変えている。

F:それは、モールとかの加飾部品を変えたということですよね。

五:いえいえ、鉄板です。鉄板を変えています。微妙にデザインが違うんです。

マイチェンで全面的に造り直したのに、なぜデザインを変えなかったのか?

F:鉄板のデザインを変えた。それじゃプレスの金型も変えた?

五:もちろん新しい金型を起こしました。造形が違うのですから、金型も変えなければいけません。

F:そこまでして……しかし鉄板の部分も変わっていたのですね。いや面目ない。全く気が付きませんでした。

五:実はここ、社内でも議論がありました。正直な話、デザインを大きく変えようと思ったら簡単に変えられたんです。だって金型から造り変えるのだから、大変更も小変更もやることは大して変わらない。ここは大いに悩みました。鉄板を変えるのだから、それを機に大きく変えちゃおうという思いもある。ですが一方で、発売後まだ3年目で、外観の評価が非常に高いという事実もある。我々は日本国内でそれほどシェアがある会社ではありません。だから「アウトランダーってこうですよ」というイメージを押し出したかった。結果として「イメージを変えずに物を造り変えよう」という方針で落ち着いたんです。