企業のトップが今、最も欲しがるのは、どんな人材でしょうか?それは、事業の変化のスピードに対応できる人だと思います。基本的にソフトバンクは、孫さんが注力する事業分野が3~5年のスパンで変化します。これはテクノロジーのトレンドとも密接に関係していて、例えば今はAI(人工知能)分野に全力投球していますが、5年前は違いました。

 ソフトバンクほど変化に機敏に対応する企業ではなくても、どこの企業も多かれ少なかれビジネス環境の急変に戸惑うことが増えていると思います。例えば重厚長大な製造業だってトランプ米大統領の関税政策により、右往左往する可能性が高まっていますよね。

 事業環境が目まぐるしく変化する中で、人材をゼロから育成する時間は、多くの企業ではなかなか持てません。だから、あれほど新卒一括採用だった大企業も、中途採用の比率を増やしているのです。そのため転職では、企業の成長戦略をよく理解し、トップおよび幹部が抱える課題に適切かつスピーディーに解決策を提案できる人が採用されます。

トップの志に共鳴できるか
ある意味で両極端な条件が試される

 さて、もう一つの欠かせない条件とは、「トップの志に共鳴できること」です。ソフトバンクの例で言うと、孫さんとの面接で志について議論をしてから入社している人ばかりでした。

 では、志とは何かというと、「共有できる夢」を指すと思います。例えば「お金持ちになりたい」「大邸宅に住みたい」「異性にモテたい」など、ひとりで見る夢は単なる夢に過ぎません。

 一方で志は、「日本の証券業界を変えたい」「サービス業を革新したい」「ITで世界を変えたい」など多くの人と共有して実現するものです。このような志は、どんなに変化が早い時代でも必要な軸となります。

 課題の解決策をその場で出せること、志に共鳴できること。この二つを同時に満たすには、短期的な問題解決能力と、長期的な視座を持っているか、ある意味で両極端な条件が試されています。なかなか難しいと思うかもしれませんが、即戦力が求められる現在、こうした採用の条件がよりシビアになっていると感じます。