長期金利の上昇は、国債の流動性が低下したためか、はたまた米景気に引きずられているのか
Photo by Ryosuke Shimizu

 5月13日月曜日、午前10時10分──。国債のブローカーでもある短資会社に、日本銀行と接続されるスピーカーから「オペをオファーします」という音声が流れると、前週末から荒れ模様だった国債市場に安堵の空気が広がった。

 4月4日に日銀が超弩級の金融緩和策を打ち出し、市場から発行額の7割もの国債を買い上げていくと判明して価格が乱高下して以降、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった債券市場。それがまた狂い始めたのは、前週金曜日の5月10日のことだった。

 米国など海外の長期金利に上昇圧力がかかる中、この日は午後の円債市場で先物相場が急落。10年物(中心限月6月物)が前日比1円安となり、東京証券取引所は取引を一時中断するサーキットブレーカーを発動した。4月の緩和策以降、6回目の発動という異常事態である。10年国債は利回りが一時0.7%と今年2月時点の高水準まで売られた。

 これに対し日銀は、前日の9日に総額1兆2000億円の買いオペを実施したばかりにもかかわらず、価格下落に歯止めをかけようと配慮したのか、13日も同額の買いオペを断行。これには市場もほっと胸をなで下ろしたわけだ。

 ところが、である。日銀がいかに機動的に“チューニング”を行っても、やはり長期金利はコントロールできないのではないかとの疑念が、徐々に実証され始める。

 なんと午後に入って国債先物がまたも急落、7回目のサーキットブレーカーが発動される事態に陥ったのだ。日銀がこれだけ国債を買い入れても価格は全ゾーンで下落し、10年物利回りは一時0.8%まで上昇した。

「これで振り出しに戻ったな」

 ある国債ディーラーは、再び不安定化した債券相場を眺めながら、そう言ってため息を漏らした。