「高卒ファンドマネージャー」が誕生!
日本のマーケットには多様性が欠けている

藤野:実はひふみ投信でも、新しいチャレンジをします。この対談が公開されるころにはもう発表しているはずですが、ある個人投資家をファンドマネージャーとして採用します。日本初だと私は思っているのですが、高卒のファンドマネージャーです。

田村:いいですね。グローバルにイケてる会社って、こういう会社ですよ。

藤野:彼は高校を出てからゲーム制作の専門学校に入ったのだけれど、1年で中退してしまいましてね。その後、ずっと自分の部屋で、毎日オンラインゲームばかりやっていたような人間だったんです。

田村:いわゆる引きこもり?

藤野:まあ、そうですね(笑)。でも、あるとき『ビックマネー!』っていうドラマをテレビで見たそうなんです。TOKIOの長瀬智也さん主演で、伝説の相場師と呼ばれた老人の手ほどきによって、株式の世界に目覚め、社会の不正に立ち向かっていく、というドラマでなんですが(編集部注:原作は石田衣良著『波のうえの魔術師』。オススメです!)。

田村:ありましたね。

藤野:それを見たのがキッカケで65万円の元手を、なんと12億円にまで増やしたそうなんですよ。日経ヴェリタスにもインタビュー記事が出たり。その彼が個人投資家を引退して、当社に来ることになりました。

田村:おお~!藤野さんがスカウトしたんですか?やっぱりいまはそういう時代なんですね。前回もお話ししましたが、アメリカでも大学中退とか高卒で社会に出て成功したという人は多いですから。

藤野:別に話題性重視でスカウトしたわけではなく、「多様であること」が重要だからなんです。マーケットって、いろいろな人が、いろいろな観点から精査して、叩いていくことで育っていくものです。でも今の日本のファンドマネジャーって、たいてい六大学以上の有名大学卒とか、海外の大学に留学したりとか、デキる集団なんですね。

 つまり、みんな同じようなキャリアだから、同じ価値観の人間ばかりが集まっているわけです。これは日本の株式市場にとって、よくないんです。

田村:みんな似た考えで投資してしまうと偏りが出ますからね。

藤野:そうです。その意味でも少し違ったキャリアを持つ彼が、マーケットを叩いていくことで面白いことになると思っています。もちろん、ただ違っているというだけではなくて、天才というか、しっかり実績を上げる人を採用して、力を活かしていくことが大切ですけれど。

田村:日本人はチームワークでやってきたけれど、これからの時代は1人の天才が新しいデザインを描いたり、アイディアを生んで実現させていったりする度合いが高くなるように思います。組織や社会のなかに天才たちの力をいかに活かしていくか。それを考えていく必要がありますね。