世の中はいつまでも「不完全」。
日本だって例外ではない!

田村耕太郎(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学元上席研究員、ハーバード大学元研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。日本人政治家として初めてハーバードビジネススクールのケースの主人公となる。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール 危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了。東京大学EMP修了。国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社相談役。2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。シンガポールの国父リー・クアン・ユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。著書にベストセラーになった『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?』(中経出版)などがある。

田村:さらにいえば、お金だけでなくて、年齢もそうです。何歳になっても、新しいものを作り出していける可能性は十分にあります。その可能性を広げていくために大切なのが「いまの世の中は、まだまだ不完全だ」という認識だと思うんです。若い人にはまずこの認識を、しっかりともってほしいですね。

「日本の社会は、もうできあがっていますから」
「成熟していてなんでも手に入るし」なんて頭のいい学生たちは言いますが、物事は常に動的に変化していきます。教育だって、政治だって、いま世にあるサービスだって、その前提のもとでは完全じゃないです。常にチャンスはそこら中にあるし、日本から世界のメインストリームとなる事業が新たに生まれるかもしれません。

藤野:世の中が不完全だからこそ、そこから様々なチャンスが生まれている。

田村:だからこそ、「自分にはチャンスがあるのだ」という意識を持って自分を鍛えていってほしいし、チャンスに対して貪欲に挑んでいってほしい。いろんな人と触れ合っていくことを、若い人にはやってほしいなと一番強く思いますね。

グローバルだけが仕事じゃない
世の中の「不完全」を見つけろ!

田村:社会という方向に目を向けると、高齢化について暗く考える人は多いですね。政治家でさえそう考えている人がたくさんいます。

 でも、いまの日本の高齢者ってお金は持っているし、ネットワークも持っているし、元気です。しかも彼らに対するサービスはまだ全然行き渡っていません。英語を勉強してグローバルに戦える力を鍛えるのもいいですが、高齢社会が生み出す需要だって侮れない。

 何も全員がグローバルに対応しなくてもいいんです。だから英語ができないという人にはよく私は「英語はあきらめて敬語を勉強しろ」と言っています。

藤野:なるほど(笑)

田村:英語が苦手だったら、おじいちゃんやおばあちゃんの生態をしっかりチェックして、そのサービスを考えたらいい。彼らが今あるサービスに対してどんな不満を持っているか。それこそ、まだまだ不完全ですよね。そこから大きなビジネスを生み出すことができるかもしれません。

 僕はスーパードメスティックに特化して、正しい敬語を学んでいくことも、若い人には武器になると思うんです。

藤野:人数が多いから需要も大きそうですよ。

田村:実際かなり大きいですよ。私はよく渋谷のスクランブル交差点を例に出してその話をします。日本のなかでも東京は、これから一番高齢化が進むところだと言われていますが、となるとあの交差点を渡る人たちの風景は20年もすると大きく変わりますよね。

 日本の信号って、だいたい35歳の成人の歩行速度に合わせているそうですから、信号を渡りきれない高齢者だって出てくる。だから、高齢社会がやってきたら、あの信号が変わる間隔も変えないといけないし、道の段差もなくしたほうがいいかもしれません。

 また建物の階段のステップの間隔はもちろんメニューの字の大きさまで、日本中ですべて変えなければならない。壮大なビジネスチャンスですよ。世の中は不完全だと考えると、いろいろ新しい可能性も生まれてくるわけです。「壮大なチャンスですよ」と私の本の中でも言っています。