「現在は、3時間に1度機械を洗浄して錆や腐蝕を防いでいますが、洗う頻度を決めるまでも時間がかかりました。防水機能が乏しく、そもそもどこが洗える場所なのかもわからなかったので、現場でトラブルが起きる度に解決策を考えるのも苦労しました」(矢山氏)

 トライ・アンド・エラーを積み重ね、2021年1月にAIたらこ選別機の実用化に成功。プロジェクトがスタートしてから、実に3年もの歳月が流れていた。

エラー続きのテスト運用期間
現場からは反発の声も…

 さまざまな苦労と困難を経験した矢山氏だが「諦めるわけにはいかなかった」と、当時を振り返る。

「多くの人が携わっている事業であり、なんとしても業界初のAI技術を確立したい、と考えていました。試運転を開始した当初は、工場で働くスタッフたちから『エラーが多すぎて仕事に支障が出ている』『本当に必要なのか?』などの声が上がっていましたが、今ではAIたらこ選別機の存在が当たり前になっていますね」(矢山氏)

工場内で稼働中のAIたらこ選別機工場内で稼働中のAIたらこ選別機

 AIたらこ選別機が導入された今、かつて20人で行っていた選別に関わる人数は3人のみ。作業自体もコンベアにたらこを乗せるだけなので、経験の浅い新人スタッフや日本語が不得手な外国人材もすぐに取り掛かれるという。

「選別作業の生産性が上がった結果、機械化できない仕事の人員を増やせるようになりました。たとえば、たらこに付いている筋などを除去する『異物除去』の作業は、繊細で熟練の技術を要するAIに代替できない仕事のひとつ。選別に必要な人数が減った分だけ、異物除去のスタッフを増員し、技術の継承につなげています」(前出・中野氏)

 その一方で、商品の生産計画や発注書の作成など、工場内のデスクワークにAIを活用する計画が進行中とのこと。やまやでは、今後も積極的にAI技術を取り入れる予定だ。

「AIたらこ選別機を導入したおかげで、当社の業務における人とAIの得意分野が明確になったのは大きな学びでした。AIに関してネガティブなニュースも多くありますが、私たちにとっては共に働く“仲間”になっていますね」(中野氏)

 AIとの協働を実現したことで、人でなければ務まらない仕事も見えてくる。まずは「仕事が奪われる」という先入観を取り払うのが、AI活用の第一歩なのかもしれない。