「皆と同じもんを食べへん
そんなん仲間やないゆうことですやん?」

「アレルギーかなんか知らんけど、皆と同じもん(給食のこと)を食べへん。同じクラスにおって、そんなん仲間やないゆうことですやん? 何、勝手なことしとるねんてなもんや。黙って学校が出すもん食えやと思うてた人もいてたはずですよ」

 お弁当持参で目立ってしまったのがいじめの遠因か。出る杭は打たれるというが「出過ぎた杭は(表立っては)打たれない」もまた真理といったところか。

 このヒナタさんとも親しく、かつ、いじめ加害側のメンバーとも仲の良い児童がいる。この児童は芸能活動を行っていることで周囲ではよく知られている。

 芸能事務所にも所属し、モデルや子役といった活動をこなしている。この児童の芸名をインターネットで検索すれば、その活躍ぶりを伝えるSNS投稿や写真へとヒットする。

「この子のママが、『ヒナタ嫌い。ヒナタと一緒に遊ぶな、家になど絶対呼ぶな』とよう言うてたの、近隣の人たちの間では、よく知られた話ですわ。(ヒナタさん親子が)自分たちより目立つんが気分悪かったんかもね」

 別の保護者はこう語る。この保護者によると、ヒナタさんの兄姉もこちらの小学校の卒業生だが、皆と同じように校区内の中学校に進学せず、この周辺では難関で知られる私立中学校へと進んでいる。同じ神戸市内でもここ長田ではないところから引っ越してきて、周囲とは異なった行動をして目立つ――。そうしたことも、この芸能活動をしている児童をはじめとした地域の母親たちが気分を害する原因となったのではないかという。

 これもまた、先でも触れたお弁当同様「皆と同じことをしていない」からなのだろう。どうやらこの街では、こうした「皆と同じこと」をしない人への風当たりはとても強いものがある。

 ここ長田という町で、そうした目立つことをしても何も言われず、周囲から無条件で応援されるのは、この芸能活動をしている児童とその母親に見られる「何代もこの町で暮らしている人」で、かつ「町の顔役」といった家系に連なる人とその子どもだけのようだ。