怒りや欲、焦りを感じると
呼吸にも乱れが生じやすい
小野 自分が今、怒りを抱えているんじゃないか、欲がもたげているんじゃないか、焦りじゃないか、緊張しているのかということも、呼吸の意識を通じて気づきやすい。そうすると、あ、自分は、今よろしくない状態になっているかも、と気がつけて、深呼吸をしたり、体の緊張をほぐしたり、1拍置くことで、少し心を落ち着ける機会が生まれる。日常から呼吸に意識を向けることで、心に乱れを起こしそうな欲や雑念を流すよう試みる、ということは日常でも効果的ではと感じております。
「息の出入りに気をつけて」というのは、経典でも語られており、すごくシンプルながら実践的なブッダの教えなんじゃないかなと思います。
香山 具体的には、呼吸のテンポがちょっと変わるとか、ゆっくりしていたものが速くなるとか、そういうことですか。
小野 はい。焦りや怒りが生じているときは、体が無意識のうちに緊張状態になり、体がこわばり、呼吸が浅くなってしまう。しっかりと二酸化炭素を吐くことができなくなり、そのため十分な酸素を吸えなくなる。そうすると、本人も自覚してない間にどんどん脳にフレッシュな酸素が行かなくなって、冷静な判断力が失われ、感情や欲に流されやすくなり、ネガティブな状況に引きずり込まれていく。そう考えています。
自分はまだ瞑想の初心者でしかありませんが、もしかしたら得度前のランニングの体験によって、呼吸への意識づけは鍛えられていたのかもしれません。ランニングでも、呼吸への意識を持つことで肉体だけではなく心の状態も改善できた体験があったのですが、瞑想における効果にも同じようなものがあるのではと、感じています。
香山 瞑想は1日にどのぐらいされるんですか。
小野 時間はあまりこだわっていません。基本的には毎朝、日の出前後に、数十分から1時間半ぐらい、瞑想しています。長く瞑想をすればよいというのもとらわれになるので、あまり時間は意識せず、そのときの流れに任せています。朝瞑想ができないときは、散歩中に呼吸に意識を向けて瞑想状態をつくったり。
今日もここ(編集部注/対談場所)東京駅から30分ぐらいですけど、歩行瞑想をずっとしてきました。お遍路で四国を歩いたときは毎日12時間ぐらい歩くので、そういったときは1日の大半がほぼ瞑想状態にあったりもします。大切なのは継続ではと勝手ながら考えております。