販社の再編で中国EVを併売に大転換

 日産がインドネシアでの生産を撤退後、最大の焦点となったのが既存顧客への対応だ。販売が低迷したとはいえ日産車ユーザーは依然30万人以上いるとされ、アフターサービスの確保は不可欠。日産は工場閉鎖時、「良好なパートナーであるインドモービル社との協業を通じ、MPVとSUV中心に販売を継続する。サービス体制も維持する」と表明した。

 インドモービル・グループはインドネシア有数のディストリビューターで、日産以外にも仏プジョーや印マヒンドラ、韓国キア、最近では仏シトロエンなどの販売代理を手がける。1990年代から日産車を販売し、2020年8月には日産のインドネシア販売会社の株式の大半を引き受け、筆頭株主として事業運営するようになった。

 インドモービルは「日産ブランドの販売とサービスを強化する」と宣言。別のローカルディーラーが撤退したこともあり、日産正規ディーラー網はインドモービル系列に事実上一本化された。

 ここで注目したいのが、最近のインドモービルの動向だ。既存の販売店を有効活用しようと、中国の広州汽車集団の新興電気自動車(EV)ブランド「AION」を取り扱い始めている。24年6月、ジャカルタやバンドンの7拠点で、AIONのショールームをオープン。これら7拠点はいずれも元日産/ダットサン販売店で、日産車のメンテナンスサービスを続けながら、中国EVを併売する形態に転換したのだ。

 日本人からすると驚くだろうが、こうしてインドネシアでは元日産販売店が複数ブランドを扱う店に変身している。例えばある販売店では、日産車に加えてキアやシトロエン、さらにAIONまで扱い、SNSで熱心に宣伝している。

 多様化する市場のニーズに合わせて、販売業者が柔軟に複数ブランドを扱うのはインドネシアでは決して珍しいことではない。が、日産の工場閉鎖の影響が、こうした業態転換を加速させたとも言える。