日産の再起は?BYDと協業が希望の光か

 では、インドネシア市場における日産というブランドはどんなイメージを持たれているのだろうか? 残念ながら、「かつて流行ったマニア向けの日本メーカー」として定着してしまった感がある。

 逆に台頭しているのが、韓国のヒョンデ(現代自動車)だ。日産撤退とほぼ同時期にインドネシアで工場を建設し始め、中国メーカーとともにEV販売を加速させている。こうした目まぐるしい動きに、日産の存在自体がかき消されているようだ。

 インドネシアは人口2億7000万人を超え、経済発展や所得水準の上昇に伴い、多様な自動車ニーズが育まれている。政府は、EVバッテリーの原材料となるニッケルが世界最大の埋蔵量を誇ることから、EVの生産・販売を強力に推進している。

 日産はEV技術に長けていたはずなので、それを生かした新車を投入できないのだろうか? 日産の内情に詳しい日系商社の駐在員によると、「率直な話、今さら現地生産を再開するなんて不可能。ただし、中国のBYDなどインドネシア国内に生産拠点を立ち上げているEVメーカーと協業すれば、本格的な再参入も夢ではない」と話す。

 インドネシアにおいて24年の日産の新車販売台数は1377台、ダットサンは0台で、市場シェアはわずか0.2%。グランドリヴィナやエクストレイルが人気だった時代の、見る影もない。しかし、他社との協業やEVで、再び脚光を浴びる可能性はゼロではないようだ。

 ホンダとの経営統合が破談した日産は、再建策としてタイの工場を閉鎖する。タイ第1工場を今年秋ごろまでに、第2工場も26年度中に閉鎖するなども含めて1000億円のコストを削減するという。

 タイではスズキが工場閉鎖、ホンダも生産能力を半減し、スバルも生産撤退する。さながら日系自動車の生産撤退ラッシュだ。そして実はタイでも、日本メーカーのディーラーが中国メーカーに代わっていっており、日本車のシェアが低下する一方で中国勢や新興メーカーのシェアが伸びている。

 インドネシアの自動車市場における変化が、近い将来タイでも起きる気がしてならないのは、筆者だけではないだろう。日本車の牙城だった東南アジアで、地殻変動が起きていることだけは確かだ。

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