そうした体験のひとつひとつがいまもなお身体感覚の源になっていると感じます。それが僕のときめきセンサーの素地なのでしょう。

 現代の、それも特に都会で育った人たちはなかなか五感を刺激される機会がないはずです。本来は唯一残された自然であるはずの公園ですら、砂場は封鎖され、土に触れる機会すらも遮断されている。とにかく地球と距離が離れた暮らしになってしまっているのです。

 ですからなおさら日々意識して、自分のなかのときめきを見つめ、ときめきと向き合ってほしいのです。

 でも、実はおもしろい現象も起こっています。僕は最近日本にいるときは主に地方を巡っています。そこで気がついたのは、本来田舎で自然豊かに暮らしているはずの人たちのほうが歩かなくなっている現状です。

 車社会になり、便利さを追求した結果、郊外の複合施設へ車で行き、そこですべてのものが手に入るようになった。そこから帰っても普段は家のなかでスマホを見て、あらゆる娯楽へアクセスし放題。そのあいだは、本来は周りにあるはずの自然などの豊かさを感じることをいっさいしていません。豊かな自然に囲まれながら、無機質で意味の少ない活動に時間を費やしている。

 逆に都会にいると、発達した交通網もあることから電車を使い、よく歩きます。1日で1万歩以上歩くなんてこともザラにあります。しかし、仕事をがんばってある程度のお金が手に入るようになると効率を重視してタクシーやハイヤーを使うようになり、また歩かなくなる。そして、そこで得た時間でまた仕事をする。そして、さらなる成長や発展を追い求めるようになる。

 これ、いつまでやるのでしょうか?もはやヘンテコな世のなかです。

「たくさん魚を釣って儲けよう」
それで成功したらどうするの?

 あの有名な「メキシコの漁師とアメリカ人投資家の話」のようです。

 あるアメリカ人投資家がメキシコの小さな漁村を訪れたとき、地元の漁師が小さなボートに乗り、色鮮やかな魚を釣り上げて帰ってくるのを見ました。

 投資家は興味を持ち、漁師に訊ねました。

「なぜこれほどすばらしい魚をもっと多く釣らないんだい?」

 漁師は答えます。

「家族に必要なだけの魚を釣れば十分だからです」

 投資家はさらに訊ねます。

「それなら、もっと釣って売れば、お金を貯めて大きな船を買えるだろう。大きな船があればもっと多くの魚を釣れて、さらに儲かる。そうしたら従業員を雇い、事業を拡大し、最終的には会社を設立して株式公開までできるかもしれない。何十年かあとには大金持ちだ!」