
競合と比べて高いから、売れない?
ミニマリズムと“商用車”は違う!
ハードウェアの出来は十分に良いものだった。コンパクトクラスのハイブリッドカーとそれほど変わらない燃料代でドライブができる経済性。家族で遠出するようなアクティブ派には、疲れにくさ、室内の使いやすさ、眺めの良さを大きなメリットと感じるだろう。
そんなステップワゴンが販売で苦戦している理由は何か。まず、価格が競合のトヨタノア/ヴォクシーや日産セレナに対してかなり高いことが挙げられる。
大衆車にとって、競合モデルより価格が高いのは(一般的なイメージよりも)はるかに大きなアゲインストだ。ステップワゴンは、3社の同格モデルの中でパワーは圧倒的、利便性でも優位に立つ。が、内装の質感などライバルに負ける部分もある。消費者が「これはいいモノだから高くても仕方ない」と納得してお金を払ってくれるような価値を付けられているとは言いがたい。
大衆商品であるクルマにとって、「過剰性」はマジョリティユーザーが喜ぶポイントのひとつだ。上位グレードに装備を盛れば500万円近くなる4.7m級ミニバンは、特にその傾向が強い。
そのミニバンで、あえてミニマリズムを前面に出す――ホンダのチャレンジ精神はあっぱれだが、単に必要でないものをはぎ取ってスリム化すれば、“商用車”になってしまう。現実的には、競合製品に対抗する性能や装備を盛らなければならない。ミニマリズム=知的と感じさせる商品を作って売ることがいかに困難か、筆者も大いに考えさせられた。
といっても、24年の販売実績は5万台以上あるので、理解者もいなくはない。プレーン、シンプル、それでいて高品質なクルマを欲している客層にどうアプローチするか。ホンダの営業力が試されるところだ。

