対中国で意識する米国の弱点は造船だった!
トランプ相互関税を簡単におさらいすると、新たに発動したのは10%の基礎関税と上乗せ税率の二つから成る。上乗せ税は、主に通商相手国の関税率、付加価値税(わが国の消費税に相当)や規制といった非関税障壁を評価し決定したという。
相互関税によって、トランプ政権は中国に対して54%(追加関税20%プラス相互関税34%)の関税を課すという。他方、イギリスのように、米国が貿易黒字国である通商相手国にも相互関税をかける。
相互関税の発表の中で、トランプ氏は4月2日を「米国産業が生まれ変わる日」だと宣言。過去50年間、世界の自由貿易体制が強化されたせいで米国の製造業が衰退したと断じた。労働者は、中国や欧州、わが国や韓国による搾取に苦しんだと一方的にまくし立てた。
米国の世論調査からも、「関税政策を使って製造業を復活させなければならない」との見方が国民にも根強いことが分かる。例えば米ハーバード大学などの最新調査(3月31日発表)によると、「トランプ氏の政権運営はバイデン前大統領より良い」と回答した人が54%だった。関税政策に関して、「米国が貿易相手国から良い条件を引き出し製造業の再興につながる」との回答が51%あり、「逆効果になる」(49%)を僅差で上回った。
そうした世論を背景に行ったのが先の4月2日の演説であり、トランプ氏は農産品、デジタル家電に加えて、船舶、医薬品、半導体の関税も引き上げる方針を示唆した。
また、トランプ大統領はかねて、税制優遇で米国の「造船」能力を高める方針だ。念頭にあるのは、南シナ海や台湾近海、さらにはグリーンランドが面する北極海といった海域で中国艦船の航行が活発化していることだろう。
現状、中国と米国の船舶建造能力は、200:1程度の大差があるとみられる。世界の造船シェアは、中国と日本と韓国と欧州で90%超を占めている。要するに、米国は造船産業において非常に弱い立場なのだ。トランプ氏が造船産業の育成に強い意志を示していることも、製造業を復活させる狙いと関係しているだろう。