リーダーは指導する前に、練習メニューを提示せよ
かつての「怒られ侍」だったぼくでも、仕事のやり方は分かっていました。頭では分かっているんです。でも、いきなり「試合」に出されるからミスをしてしまう。
ここでリーダーが改めて指導しても、さほど意味はありません。「いい? もう一度ゼロからおさらいしてみよう。まずこれをやって、次にこれをやって……」と伝えるだけではできるようにならないです(ましてや高圧的に指導したら効果は全く期待できないでしょう)。
リーダーが示すべきは、試合で実力を出せるような練習メニューです。
当時のぼくは、いろんなタスクを同時並行で進めることができず、抜け漏れが多かったです。上司から指示されたことを忘れており、「なんでやってないんだ!?」とほぼ毎日叱責されていました。
言われたことを忘れているので、怒られても仕方がないかもしれません。でも、怒られたところでできるようにはならないですよね。
ぼくに必要だったのは、マルチタスクを同時並行で進められるようにする練習でした。
たとえば、
・自分がやるべきタスクをメモする練習
・1日の終わりに当日発生したタスクを洗い出す習慣を身につける練習
・抜け漏れが発生したときに、すぐに誰かに相談するための練習
などです。もしくは
・ゲーム感覚で、いろんな項目を覚える練習
・カラダを動かしながら、何かを覚えなければいけない遊び
でも構いません。とにかく、自分でも練習と割り切って取り組めることが大事です。そしてそれを繰り返して慣れていくうちに、本番環境でもできるようになるんです。
3分で完結する行動に分解する
仕事に慣れていないメンバーに対しては、練習を課していかなければなりません。そして、本番環境に移ってからも、仕事を細かく分けて伝える必要があります。
「もっと主体的に動いてほしい」「細部まで気を配ってほしい」
こんな漠然とした言葉でメンバーに伝えていませんか? これでは部下は何をすればいいのかわかりません。
効果的なのは、期待することを「3分でできる行動」に分解することです。
たとえば「主体的に動く」を3分でできる行動に分解すると
[最初の3分] 朝一で今日の業務優先順位を紙に書き出す
[次の3分] その優先順位を上司に共有する
[その次の3分] 不明点があれば質問リストを作成する
このように具体的に示せば、「主体的に動く」という抽象的な概念も実行可能になります。
メンバーは「仕事ができない人間」なのではなく、「まだ慣れていないだけ」なのです。
慣れるまでは一度にまとめて指示してもわかってもらえません。とにかく小分けして、一つずつ伝えていくことが大事です。
相手の「正義」を理解する
リーダーと部下の関係がうまくいかないとき、多くは「相互理解の欠如」が原因です。
メンバーが言うことを聞かない、期待通りに動かないとき、イライラして「なぜわからないんだ?」と思うかもしれません。
しかし、メンバーにも事情と背景があります。メンバーなりの考え方や理由があるのです。まずは相手の事情と背景を理解することから始めましょう。
「なぜそうしたのか?」と問いかけ、じっくり聞く。批判せず、理解しようとする姿勢を示します。
相手が「理解してくれた」と感じたとき、人は変わり始めます。
「仕事ができないメンバー」をどう扱うかではなく、「メンバーを前に進めるために、リーダーである自分は何をしなければいけないか」を考えることが、本当のリーダーシップですね。