YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師。本記事では、日韓累計40万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の邦訳1周年を記念して、益田裕介医師に気分とメンタルの関わりについてインタビューを行った。本記事では、連休中こそ気を付けたい、メンタルを崩す生活習慣について精神科医の視点から解説する。(取材・文 ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

「孤独」は精神に大ダメージ
――長期の連休が始まると、生活習慣が乱れる人も多いです。メンタル不調につながる生活習慣の中で、特に気をつけた方がいいことは何でしょうか?
益田裕介(以下、益田) いろいろありますけど、ワースト1位は「仲間や家族と距離があること」じゃないですかね。友達がいない、会話する相手がいないというのは、精神的にかなりダメージが大きいです。特に今の時代はそれが顕著です。
精神科の患者さんと、普通に生活している人との違いって、突き詰めるとそこなのかなと思います。家族や友達とつながっている人は、極端にアルコールを飲みすぎることもないし、スマホやSNSで誹謗中傷に夢中になることも少ない。
能力主義とかもどうでもよくなる。誰かとつながっているだけで、ブレーキがかかることって多いんですよ。
「幸せになるため」に
生まれてきたわけではない
――では、2番目に気をつけるべき習慣は?
益田 「感情に支配された生活」です。
たとえば能力主義やルッキズム、陰謀論なんかもよくない。そういう世界観や思考回路だとうまくいきにくいよね。
それと、よく“幸せになるために生きている”って思いこんでる人がいますよね。これ、一見前向きに聞こえるけど、人間って、別に幸せになるために生まれてきたわけじゃない。
脳は問題解決を繰り返して進化してきた。“幸せであるべき”という前提が強すぎると、現実とのギャップに耐えられなくなっちゃう。
ちゃんと自分を観察して、感情に飲み込まれそうになったときに合理的な行動を選ぶ。その力がすごく大事です。リラックスタイムを持つとか、内省の時間を意識的につくるとか、そういう生活が必要ですね。
――たしかに、現代人はスマホを見る時間も多く、内省どころじゃないのかもしれません。
益田 そうそう。スマホやSNSって、不安を煽る情報ばかりですし、誹謗中傷もあるし。常に“刺激”があると、感情が落ち着かなくなる。
だからぼーっとする時間が重要なんですよ。 脳の中に「デフォルトモードネットワーク(DMN)」っていう、休息中に働く回路があるんですが、そこがうまく機能することで、記憶や感情が整理されるんです。
頭で理解していても感情がついていかないとか、そういうのは内省の時間が足りないことが多いんです。
スマホを減らすとか、日記をつける、リラックスタイムを持つ。マインドフルネス的な習慣が、メンタルには本当に大事です。
せめて「一人飲み」はやめる
――では、3位は何でしょうか?
益田 3位は「アルコールの過剰摂取」と「食事の偏り」ですね。これも本当に多い。
とくにアルコールは、今もやめられない人がたくさんいます。一時期極端にアルコール度数の高い“ストゼロ”に依存する人が問題になりましたけど、今でも根強くありますよね。医者ですらやめられない人もいますから。
お酒を飲むなら、せめて一人では飲まない、お店で誰かと飲むようにする。それだけでも違います。
それから食事。精神科の患者さんには、極端に食べない人も多いんですよ。ガリガリだったり。
カロリー不足だと脳も体も動かないので、最低限、基礎代謝分は摂ってほしい。僕はよく「病院食を参考にして」と言ってます。意外とお米が多いし、バランスが整ってるんですよ。
――生活習慣を見直す上で、最初に取り組むならどこからがいいでしょう?
益田 やっぱり仲間づくりですね。たった一人でもいい。友達でも、家族でも。
誰かとつながることが、すべての習慣改善の土台になりますから。
そのうえで、感情に支配されず、誠実な行動をとる。食事を整え、ちゃんと寝て、スマホを見すぎない。すごく基本的なことですけど、それをやるだけで全然違いますよ。
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数60万人を超える。患者同士がオンライン上で会話や相談ができるオンライン自助会を主催・運営するほか、精神科領域のYouTuberを集めた勉強会なども行っている。著書に『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)、『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)、『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!』(扶桑社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 メンタルの話 メンタルの悩みとギモンを専門医がすべて解決!』(日本文芸社)などがある。