地方の二次交通が脆弱なため、そもそも「出かけたくても移動手段がないから外出できない」という現実が観光客を足止めすると同時に、客足がないため、周辺の飲食店の閉店時間も早くなりがちという悪循環が生じています。

 FIT(編集部注/ツアーに参加するのではなく、飛行機などの移動手段や宿泊などを個人で手配する旅行者)全盛とはいえ、韓国や台湾からの方々は今でも観光バスを使った団体ツアーがまだまだ多く、何台ものバスに連なって訪れるため、人数はかなり多い。移動の自由度が低いがゆえ、「夜と早朝にすることがなく、ホテルに缶詰めにされる」という事態に悩まされて消費が冷え込むのは、あまりにもったいない話です。

 現実的な提案としては、ホテルが旅行業法に基づいて旅行業登録を行うことで旅行業の資格を取得すれば、宿泊客の送迎が可能になり、食事後の夜間や早朝に現有のリソースから逸脱しない観光体験を提供できます。これだけで地方に訪れる観光客に新たな地域の価値体験を生み出すことができ、アイドルタイムの活用が新たなビジネスチャンスになると考えます。

 行政は有名無実のコンテンツ造成に多額の予算を投じるくらいなら、こうした旅行業の取得を補助金で促したほうがいいと私は考えています。

夕食後や早朝の時間帯で
マネタイズする方法

 熊本・阿蘇などで主に宿泊事業者が主体となって行っている試みで、夜間に宿泊客をマイクロバスで星がきれいに見える高台へとお連れし、満天の夜空に輝く星々を眺めてもらう体験が人気を呼んでいます。

 マイクロバスに乗せたパイプ椅子を、各々が思い思いの場所に運んで陣取り、星を眺めるという簡素な内容です。大勢のスタッフは、特段いりません。人手不足は深刻なので、ガイドも運転手が兼ねることができる体験を実施。これまで客はホテルの中ですることもなくテレビをただ眺めていたのですが、人里離れた場所ならではの満天の星空を堪能できて貴重な思い出を作れるようになりました。そして、ホテルは労を掛けずに新たな収益源を確保できるということです。