いい管理職=経営者適性がある人ではない

安斎 でも実は、そういう人ばかりが出世していくと、今度は経営層に向いていない人材ばかりが残ってしまうという問題もあるんです。

 いま挙げた「マネジャーに向いていない人」の中には、「本当は強いリーダーシップを持っている人」や、「高い専門性を持っている人」も含まれていたりする。そうした人たちをマネジメントから外してしまうと、将来の経営リーダー候補が育たないというリスクにもなり得ます。

 だからこそ、マネジメント初心者のうちは、まずは調整型でチームと協調して成果を出す経験を積みつつ、そのなかでだんだんとマネジメントに習熟してもらうプロセスを設けるべきだと思います。

 マネジメントにある程度習熟した段階で、「自分はこのスキルをどう活かしていきたいのか?」を考えるタイミングがくる。

 そのときに必要なのが“内省支援”です。

 たとえ管理職としてある程度うまくいっていて、しっかり結果を出しているように見える人でも、じつは「何のために働いているのかわからない…」と感じていたりします。

 そういう人を何も考えずにさらに上位のマネジャー職に引き上げてしまうと、組織にとっては必ずしもプラスにならないこともある。

 その意味では、人事や上司がキャリアの振り返りを手伝い、次のキャリアを一緒に考えていくような仕組みのデザインが大切になります。

安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)、『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)、『パラドックス思考』(ダイヤモンド社)、『チームレジリエンス』(JMAM)などがある。