さらに働き方改革にもつながった。管理職は休日出勤ありきで仕事を回しており、残業時間は月70時間ほどに及んでいたが、これが激減した。山田さんは月に数日しか休みを取れなかったところ、月6日は休みを確保できるようになった。

 同社の前田裕子(57)会長は、山田さんのことを「なめられない女」だと評する。課題解決に向けて理路整然と他部署に向けて説明し、毅然とした態度で動くことができるという。

業務改革成功の一方で
“面白くない”男性管理職も

 山田さんの改革はこれに終わらなかった。経理部門を集約して沖縄美ら海水族館にほど近い「ホテルマハイナ ウェルネスリゾートオキナワ」の一角に事務所を構えていたが、これを車で30分ほどの本社オフィスに移転することを提案した。

 本社総務や経営部門と席を並べることで、より経営判断に貢献したいと考えたのだ。

 現場にいると、プールで遊ぶ子どもの声が聞こえてくるなど、ホテルの営みを肌で感じながら顧客や従業員の声を聴くことができる。

 一方で「情に流されてしまう」デメリットもあると考えた。現場から離れることで「冷静にぶれることなく判断ができ、物事をより俯瞰することができる」ようになったという。

 業務改革が成功する陰で、改革派の山田さんに対して、面白くないと考える男性管理職も出てきた。「売上を上げているから、いいだろう」と、ある男性管理職が目に余る行動を取るようになった。

 旅行会社との契約書を社内規定どおりに結ばない、備品の購入に必要な稟議書を出さない。山田さんが「それについては会社の規定があり、役員承認も必要です」と指摘したところ、「手続きが必要なら、経理がやっておいてくれ」と取り付くしまもない。

 ひるまず対応する山田さんに対して攻撃をするようになり、定例の店舗会議で、「女のくせに」「更年期じゃないの」という暴言まで飛び出すようになった。

 これには精神的にまいってしまい、「退職願い」を出すほど思いつめた。「こんなことでキャリアを決めるのはもったいない」と上司が丁寧にフォローしてくれ、結局辞表は取り下げることになった。