今回は厄介な相手の代表的な例の1つである「論点ずらし」とその対処方法を取り上げますので、そんな場面に遭遇しても、落ち着いて振る舞えるようになっていただけたらと思います。

 ただ、ここでの「厄介な相手」というのは、あなたの心の中で「厄介だな、一筋縄ではいかないなと感じてしまいがちな人」という意味で用いますので、そのつもりでお読みいただけたらと思います。

意外と気づかずにやられている「主張のすり替え」

「ストローマン論法」(Strawman Fallacy)とは、相手の主張を意図的に歪めたり、単純化したり、極端化したりして反論する手法のことです。相手が実際には言っていないことを前提に議論を進めるもので、日本語では「藁人形論法」や「かかし論法」とも呼ばれます。

 ストローマン論法の主張を歪める例を見ていきましょう。

Aさん:「子どもが道路で遊ぶのは危ないよね」
Bさん:「子どもが外で遊ぶのはいいことだと思うけど」

 Aさんの主張が歪められたのがわかりますか。Aさんは「道路で遊ぶこと=危ない」と言っているだけで、「外で遊ぶこと」自体を危ないとは言っていません。しかし、Bさんは「外で遊ぶこと=危ない」とすり替えています。

▼「ストローマン論法」への対処法

 このような論法に惑わされないためには、どのように対処すればいいでしょうか。

「あれ、そういう話だっけ?」と違和感を覚えたら、「本来の論点は何だったか」「そもそも話したかったことは何か」に立ち戻ることが大切です。

 相手の言葉を遮ったり否定したりする必要はなく、その代わりに、「そもそもここで話し合いたいことは」と原点に立ち返ってみるのです。

 先ほどの例でいうと、

Aさん:「子どもが道路で遊ぶのは危ないよね」
Bさん:「子どもが外で遊ぶのはいいことだと思うけど」
Aさん:「確かに外で遊ぶのはいいことだと思うけど、道路は危ないよね? 私が言っているのは、外は外でも「道路」で遊ぶと危ないと言っているんだけど」

 このように、論点がずれていきそうなときは、「私が言いたかったのは○○のことです」と、相手を責めることなく冷静に論点の軌道修正をしていけばよいのです。