「犯罪などを起こした場合は、送還してもかまわないが、ただ働く場合は労働許可を与え、正規に働けるようにすべきだ。パザルジクの犯罪率は低い。日本のクルド人は犯罪者ではない。普通の労働者だ。パザルジクの人間を容易に日本社会に統合することができるだろう」

──就労許可がなく働いているのは日本の制度としては問題だ。

「ここでは経済が一番の問題。日本に行ったクルド人が(査証免除で在留できる期間である)3カ月で帰国するのは厳しい。ここの経済状況は貧しい。ここではクルド人は政治的に迫害されている。というのは公的職業に就くことができないからだ。公的機関に勤めることができないので、失業者はトルコ人よりクルド人の方がずっと多い」

──日本では多くのクルド人が難民申請をしているがどう考えるか。

「日本だけではなく、ドイツ、フランス、オランダ、英国などで難民申請をしている。政治的、経済的理由でここでは生活できないから、彼らはこの町を去る」

書影『移民リスク』(新潮新書)『移民リスク』(新潮新書)
三好範英 著

──「トルコに帰れば殺される」との主張もあるがそんなケースがあるのか。

「殺されることはない。市長としては国が殺人を犯すとは言えない。ただ、拘束される可能性はある。SNSやフェイスブックなどで反AKPの投稿をすれば、何年間も拘禁される十分な理由になる」

 市長には地域経済を預かる行政の長として、失業問題軽減や外貨獲得のために、多くの市民に、いわば出稼ぎで日本をはじめとする先進国で働いてもらいたい、という気持があるのだろう。

 ただ、それを相手国の法制度の尊重より優先させるとすれば問題だ。