「査証は人権に反する」
市長が語った“クルド人出国”

 時間は前後するが、テティルリク村に向かう前に、地域の中心市の1つパザルジク市のハイダル・イキゼル市長(55歳)に、市庁舎でインタビューした。

 パザルジクはカフラマンマラシュ県に属し、湖のほとりに広がる人口約7万人の市。市長が所属する政党は、中道左派の最大野党である共和人民党(CHP)で、市長室にはトルコ共和国初代大統領で党の創設者でもあるケマル・アタチュルクの大きな写真が掲げられていた。

 この地域は2023年2月の地震で大きな被害を受けた。斜面に広がる市街地を市役所の職員の案内で回ったが、ひびが入って放置されたビルや、更地になったまま再建の様子がない土地が至る所にあった。なかなかはかどらない復興を物語っていた。

 インタビューの内容をかいつまんで記せば次のとおりである。

「このあたりはもともと貧しい地域で、地震の前から経済問題はあったが、地震後はもっとひどくなった。自治体の長が、タイップ・エルドアン大統領の与党である公正発展党(AKP)の支持者か、そうでないかで予算配分に顕著な違いがある。私は野党CHPなので、予算が削られる。明日ドイツに行くが、町の再建に向けた支援を要請するためだ」

──なぜ多くのクルド人がこの地域から日本に行くのか。

「経済的な理由だ。それとヨーロッパ諸国は入国に査証が必要だが、日本は必要ないからだ」

──査証免除の停止を求める議論が日本であるが、どう思うか。

「なぜ日本で働けないのか聞きたい。査証の導入を支持しない。トルコに査証を要求すれば、トルコも同じことを日本にする。両国関係を傷つけることになる。通常の旅行者にも査証が要求されることになる。(労働目的か旅行目的かを)区別するのは容易ではない。査証は人間的ではなく、人権に反する」

クルド人の不法就労について
市長はどう考える?

──日本でクルド人の多くが不法就労していることをどう考えるか。