2025年5月12日にいよいよ60歳を迎えた奥田民生。本連載では奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」や吉川晃司との新ユニット「Ooochie Koochie」(オーチーコーチー)も話題の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その頭の中をのぞいてみよう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

【もしかして5月病?】人生の調子が悪いとき40代は「なんとかする」。では50代は?――奥田民生が教える
Photo by Takahiro Otsuji

人には運気の波がある

 サッポロのCMに「大人エレベーター」という企画がある。

 これは架空のエレベーターに乗り込んだ妻夫木聡さんが、年齢と同じ階数のフロアにいる大人と出会って、その人に「大人とは?」と質問するというものだ。

 俺が47歳のときこのエレベーターに乗り込んだ妻夫木君は、当時、47階にいた俺に「調子の悪いときは(どうしてますか)?」と質問した。

 この企画は、一問一答で質問されて、それにすぐ答えないといけないからあまり考える暇がないのだけれど、だから意外と本音が出る。

 このときの質問に俺は「なんとかする」と答えていた。

40代と50代とでは対処法が違う

 それから11年後の2024年、再び妻夫木君がエレベーターで58階にいる俺のもとを訪ねてくれた。

 そして11年前とまったく同じ質問をした。過去の質問を覚えていなかった俺はこの問いに「我慢する」と答えていた。

 調子の悪いときは、なんとかする(47歳)
 調子の悪いときは、我慢する(58歳)

 若いときは多少調子が悪くても、「俺はなんとかできる」と思っていたし、実際なんとかしてきた気がする。

 多少調子が悪くても、嵐が通り過ぎるのを待つんじゃなくて、立ち向かってなんとかできる体力と気力があったからだ。

 でも11年後の俺は、嵐がきたら「我慢する」と答えていた。

 多分、俺もそれなりに経験を積んで、47歳の頃には持ってなかったいいダウンも持っているから、それを着れば嵐が過ぎるのを待てるようになったのだろう。

若いうちは気力と体力でなんとかできる

 長い人生、調子のいいときもあれば悪いときもある。

 20代、30代のときは気力も体力も十分あるから、いい流れがきたらそれを爆発させることもできただろうし、「なんか調子が悪い、流れが悪い」というときも、気力と体力でなんとかなった。

 でも50代になるとそうはいかない。

「人生のピークは?」と聞かれたら、「○歳です」とは言えないけど、40代はいろいろ充実していたような気はする。

 ただそれはやっぱり体力的なことが大きくて、いまはピークからは徐々に下がってきている実感はある。

たまにはエンジンを切っていい

 20代後半のユニコーンの解散のときも、一瞬流れが変わってちょっと下がった感じはしたけど、ソロ活動をはじめ、やることはたくさんあったから、そんなに下がらずに済んだ気がする。

 俺の場合、そもそも「東京ドームでライブをやるぜ!」みたいな目標がなかったから、ユニコーンが解散したときも「これでドームが遠のいた」なんてこともなくて、だからこういうタイミングのときはいさぎよく船のエンジンを切って流れに身を任せる、でいいと思う。

 そうしていると体力さえあれば、また、自然と浮上する。

(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)