(2)実質的な借金の大きさがわかる
「ネットD/Eレシオ」
貸借対照表の「上下」を使った、もうひとつの安全性分析が「ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)」です。
これは「純有利子負債比率」とも呼ばれ、「返す必要がある借金(純有利子負債)が、返さなくてもいいお金(純資産)の何倍あるか」を表します。
※純有利子負債=「有利子負債(短期&長期の借入金と社債の合計)」?「現預金」

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例えば、ネットD/Eレシオが「3倍」なら、純有利子負債が純資産の3倍ある状態。「0.5倍」ならば、純有利子負債は純資産の半分というわけです。この数値は低いほど安全で、一般に、2倍を超えると警戒水準とされます。

定価1,430円(朝日新聞出版)
この指標のポイントは、負債から現預金を除いた「ネット(純額)」で考えることです。例えば、有利子負債が500億円、純資産が200億円ある場合、有利子負債額は純資産の2.5倍になるため危険な状態のように感じられます。
ところがその会社が、現預金を300億円もっている場合、実質的な借金(“純”有利子負債)は200億円(500億-300億)となり、ネットD/Eレシオは1倍と計算されます。つまり、その会社の財務安全性は高いと評価できるのです。
このようにネットD/Eレシオは、会社の債務返済能力を表す目安のひとつであり、数値が低いほど長期的な借金の返済能力が高く、倒産のリスクが低いことを意味します。
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早稲田大学政治経済学部卒。ハーバードビジネススクール修了(MBA)。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)にて企業向け融資業務に携わるほか、財務研修の企画および講師を務める。その後、米国投資顧問会社であるアライアンス・バーンスタインで株式投資のファンドマネジャーを務めるなど、金融の最前線で活躍。現在は、グロービス経営大学院教授(ファイナンス)。また、企業の財務アドバイザーを務めている。さらに、自身の英語スキルと経験を生かし、吉祥寺英語塾を主宰。主に中高生を対象とした実践的な英語教育に取り組んでいる。
※AERA DIGITALより転載