試し寝では「寝返り」も必ずチェック

来店したお客様にサンプルのマットレスに「どうぞ寝てみてください」と促すと、大半の人は仰向けに寝て「ちょっと硬いかも」とか「少し軟らかすぎるなぁ」といった感想をおっしゃいます。

そのまますぐに起き上がろうとされますから、私はいったん制止して「寝返りを何回か打ってみてください」と声をお掛けします。

そして「寝返りの打ちやすさも、よいマットレスの条件なんですよ」と説明すると、みなさん納得して寝返りを打って、試してみてくださるのです。

低反発は快適でも寝返りがしにくい

たとえば、低反発で軟らかすぎるマットレスだと、自分の体型に沿ってくれるので寝たときの感覚はソフトです。その半面、加わった圧力に反発する力が低く“暖簾に腕押し”のように支持力が弱く、寝返りがうまく打てないこともあります。

その結果、寝返りの回数が減ったり、不完全な寝返りで首や腰などが不自然に捻れた姿勢でしばらく過ごしたりすると、眠りが浅くなったり、肩こり・腰痛・寝違えなどの誘因にもなりかねません。

硬すぎても寝心地が悪くなることも

かといって高反発で硬すぎるマットレスだと、加わった圧力に対して反発する力が強く、寝返りは打ちやすくても、カラダの凹凸にうまく沿ってくれないため、寝心地が低下。寝返りの回数が増えすぎて、疲れることもあるのです。

マットレスを選ぶ際には、仰向きや横向きで寝てみるだけではなく、ぜひ寝返りも打ってみて、ラクにできるかどうかも確認するようにしてください。

寝返りがスムーズだと、眠りがもっと深くなる

寝返りは、単に身体の負担を減らすだけではありません。実は、質の高い眠りにも深く関わっています

人は深い眠りと浅い眠りを繰り返しながら眠っていますが、寝返りはその切り替えを自然にサポートする働きもあります。寝返りがうまく打てないと、睡眠のリズムが乱れやすく、途中で目が覚めたり、朝起きても疲れが取れていなかったりするのです。

正しい寝返りが、快眠体質への第一歩

「寝返りを打つだけでそんなに違うの?」と思われるかもしれません。しかし、実際に寝返りのしやすいマットレスに変えただけで、「夜中に目が覚めなくなった」「朝までぐっすり眠れた」というお声は少なくありません。

眠りの質を上げるために、特別なサプリや道具を使う前に、自分の「寝返り」が妨げられていないかどうかを見直すことは、とても大切な視点です。

目覚めたとき、身体が軽くなる感覚を

毎朝、腰や肩の痛みに悩まされることなく、自然にスッと目が覚める。そんな理想的な朝は、寝返りのしやすさを重視したマットレス選びから始まります。

「ぐっすり眠る」という体験は、気合いや根性では得られません。身体が自然にリラックスし、無理なく動ける環境を整えることで、初めて手に入るものなのです。

ぜひ次にマットレスを選ぶときは、「寝心地」だけでなく、「寝返りのしやすさ」という視点も加えてみてください。それが、あなたの眠りを大きく変える第一歩になるかもしれません。

※本稿は『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。