実は、知り合いのファミリーハートのオーナーご夫婦が相次いで倒れてしまったんです。最初は、ご主人が倒れて復帰できないから、奥さんが毎晩夜勤で入っていらしてね。そしたら次は奥さんが倒れて、生死の境をさまよったそうで……。それを聞いてもう、うちもこのまま続けたら同じことになると思いました。それが一番の決定打でしたね。

――本書には2023年7月10日付で、「連続勤務日が1057日に突入した」と書いてありましたが…。

 その後も、コンビニオーナーを辞めるまで1日も休んでないですよ。24年の秋までね。もう、ばからしくて何日連続で勤務したかは数えていなかったですけど。

――この春に、コンビニ最大手セブンイレブンの店長が自殺し、半年間で1日も休日がない勤務を原因とした労働災害と認定されていたことがニュースになりました。

 ご本人やご遺族を思うと胸が痛いです。休めないというのは、本当につらいこと。私たちのようなオーナー店長とは違って、このケースの契約店長(いわゆる雇われ店長)さんは、モチベーションを保つのが大変だと思います。私たち夫婦は、「自分たちの店」という意識があったから、まだなんとか耐えられましたが。

――かつて東大阪市のセブンイレブンのオーナーが異を唱えたことをきっかけに、コンビニの24時間営業がクローズアップされ、長時間労働の実態が問題視されました。ファミリーハートはその当時、何か対応をしましたか?

 特には、ありませんでした。ただ、私が今でも思うのが、セブンイレブンのオーナーさんが一番、本部を憎んでいるイメージがあります。ニュースを見たり、周りの話を聞いたりしても、本部とオーナーさんの関係性が良くないのかしらと。

 ファミリーハートやローソンは、本部に対して憎しみを持っているような人は少ない印象です。

 まあ、3社は似たり寄ったりなんですけどね。24時間体制で休めないし、人件費は爆上がりだし、本部の締め付けはきついし。ただ、その本部の締め付けのレベルが違うのかもしれませんね。今は、分かりませんが。

 ファミリーハートの本部は、間違いは認めて謝ることもあったし、話を聞いてくれるという信頼感はありました。

――本部とのやり取りで理不尽に思ったことはありますか。

 そりゃないでしょと憤ったのは、かなり昔ですが、全国の全店舗の仕様を全く同じにしようと本部が言い出した時ですね。お店の玄関を入ったら全て同じ棚、陳列にしないといけない。手書きのポップは厳禁だし、勝手な変更はもってのほか、という時期があったんです。

 けれど、その後は「店舗ごとに個性を出しましょう」と180度方針転換したんです。本部って平気で方針を変えてくる(苦笑)。30年間もやっているともう、それも慣れっこでした。

 私たちはオーナーの中でも古株だったからか、例えば恵方巻の受注でノルマを強制されたことはないです。「これくらいの数、いけますよ!」と言われたことはありますが、納得した上で発注していました。本部の営業さんとの関係性が良かったからかもしれません。