「問題文より先に設問から読む」受験テクニックを国語プロが「変な癖」と一蹴するワケ渋田隆之先生 撮影:加藤昌人

「語彙不足」が
大きな壁になっているケースも

 あとは、「語彙不足」が大きな壁になっているケースがとても多いと感じています。例えば、私が春期講習で5年生を教えたとき、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を知らない子がいたのですが、それだけでなく、「お釈迦様」と言われても、それが「誰」で、「どういう存在」なのかも分からない。そういう基本的な知識の差が見られます。

富永:先生の塾ではどのように国語の指導をされていますか。

渋田:私は子どもたちに1回の講義で2、3本の文章を読ませています。年間にすれば300本くらいになります。宗教や殺人やタブーの出てこない、良質な文章のエッセンスを読んでもらうことで、人生や感情の疑似体験をさせています。

 これを繰り返すことで、自分が経験していないことも想像できるようになる。そうやって人の気持ちや感情の機微が分かるようになっていくんです。

富永:それは素晴らしいアプローチですね。国語力を伸ばすうえで、過去問や模試はどのように活用すべきでしょうか。

渋田:私は良質な問題を出してくれる学校の過去問を使うのがよいと思います。模試は、塾が1年間に何回も問題を作っているのに対し、過去問は何と言っても、一年一度、複数の先生による渾身の作ですから。点数を測るための模試、学力をつけるための過去問と使い分ける感じでしょうか。

 必ずしも志望校の問題が良問でないこともありますので、そういう場合は別の学校の良問を使えばいい。

富永:具体的に国語で良問を出す学校と、そうでない学校はありますか。