しかし、これらの文面はサクッと闇に葬られる。高木氏が与謝野経済財政担当相から呼ばれて、大臣室に行くと、与謝野氏は「悪かった」と頭を下げたという。
《真偽は分かりませんが、最後は党の大物議員が官邸に「これでは選挙に勝てない」と談判し、ひっくり返したといううわさを耳にしました。今から思えば党に比べ官邸の力が弱かったということでしょう》(読売新聞2014年2月19日)
さて、こういう農水族とJAに「惨敗」した苦い経験のある石破首相としては正攻法で「農政改革」を打ち出したところで結局、党内の農水族から激しい反発が寄せられ骨抜きにされることは痛いほどわかっている。
ましてや、自民党幹事長の森山裕氏は「農水族のドン」。この人の支援があったからこそ、石破氏は首相になれたところもある。正面衝突は避けたい。
そうなると残された方法は「世論戦」を仕掛けるしかあるまい。
派手なパフォーマンスで「米の価格を下げるには、減反政策を完全廃止させるしかない」という世論を盛り上げて、農政改革の背中を押してもらうのだ。
農水族とはいえ、JAの票だけで国会にいるわけではない。選挙に落ちればタダの人なので、圧倒的な世論の前では、党内の改革派と敵対するわけにもいかず沈黙せざるを得ない。
この「世論戦」の先兵として白羽の矢が立ったのが、小泉進次郎氏ではないのか。
弱者ぶる農協に敗北を喫した
安倍・菅・石破3首相の悲願
今も朝から晩まで小泉大臣の一挙手一投足が注目されているように、発信力は永田町の中でもピカイチだ。しかも、この人も石破首相と同じく、党農林部会長時代、JAと農水族に「惨敗」をした過去がある。農水大臣にすれば「因縁の対決」ということで、マスコミの注目は高まる。
そこに加えて、「代理戦争」的な面もあるので、JAや農水族が反発すればするほど盛り上がる。というのも、小泉氏の総裁選を支持して、後見人的な立場である菅義偉元首相も自身が秋田の農家出身で、父親が農協と対立して独自路線を突き進んでいた方だったということもあり、農協を明確に「敵」と位置付けている。
ダイヤモンド・オンラインでは、安倍政権が、減反の見直し、農家の規模拡大や土地の集約、若手の新規参入を促す仕組みづくりなどの本格的な検討を開始した際の「抵抗勢力」をこう振り返っている。