予想通り、農協を含む農業団体は減反の見直しなどの政策転換に強く反対した。農家や農業団体は自民党の支持基盤であり、選挙区に多く農家を抱える候補者もこうした改革には慎重な姿勢を取る傾向がある。また、農協は組織力を使って政府の農政改革に影響を及ぼしてきた。これらが農政改革を大胆に進められない理由でもあったのだ。(ダイヤモンド・オンライン 2023年11月23日)

 そんな菅氏は「小泉さんにぴったりだ」と小泉大臣を応援しているとニュースになっていた。筆者もそう思う。といっても、改革派だからとかではなく、良くも悪くも世論の注目を集められるところが「ぴったり」なのだ。

 よく言われるが、日本の農政は、農水省、自民党農水族、そしてJAといういわゆる「農政トライアングル」がガッチリとハンドリングしている。かっこいい響きでなんとなく誤魔化されてしまうが、要するにゴリゴリの「農水ムラ」という利権構造があるということだ。

 原子力ムラでもなんでもそうだが、ムラの中にいる人というのは「いや、我々にはそんな力はありません」とか「農協に価格統制などできるわけがない」とかやたら弱者ぶるのだが、「選挙支援」という政治家がひれ伏す絶大なパワーがあって、それを用いて政策にも影響力を発揮してきたという動かし難い事実がある。

 そんな強力な「ムラ社会」を破壊するには、政治家個人の政治力やら、党内の根回しなどではどうしても限界がある。というより、合議を重んじる日本では、ドラスティックな改革などほぼほぼ不可能だ。「変わらない」ではなく、政治システムとして「変えられない」のである。

 昨年の「令和の米騒動」からの江藤拓農水大臣の言動や、最近のJA幹部たちの「米は高くない」というよう発言からもわかるように、「ムラ社会」にどっぷりと頭まで浸かっている人たちというのは基本的に、「ムラの人」さえが喜んでくれればいいので、「ムラの外の人」が死のうが生きようが興味がない。世間ズレした失言を繰り返すのもこれが理由だ。

 こういう「ムラ社会」を変えるには、「世の中は皆さんを中心に回っているわけじゃないんですよ」ということを粘り強く伝えてわかってもらうしかない。それができるのは圧倒的多数の声、つまりは世論である。

 小泉純一郎、安倍晋三など長期政権の政治家というのは、うまく「敵」をつくって世論を盛り上げることができた。だから、良い悪いは別にしてさまざまな「ムラ社会」にメスを入れることができたのだ。

 ただ、こういうことができる政治家はだいぶ少なくなった。果たして、小泉大臣は世論をバッグに「農政ムラ」に切り込んで、石破首相や菅元首相の雪辱を晴らすことができるのか。注目したい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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