オイシックス創業者・高島氏と
筆者の出会い
高島氏との出会いは、1997年に遡る。東京大学で情報工学を専攻し、学生ベンチャーも立ち上げていた高島氏は、本格起業の前に外資系コンサルで腕を磨いておきたいという思いでマッキンゼーに応募。その時ちょうど、同社で学卒採用責任者になった筆者は、従来のように地頭がよいだけではなく、規格外のスケール感のある人財を採ることに方針転換したばかりだったので、インタビューで即決。新しい枠組みでの採用第1号となった。実は、高島氏の父親がNTTグループの経営幹部で、以前の筆者のクライアントだったことを後から知る。
翌年、マッキンゼーに入社すると、ちょうど立ち上げたばかりのアクセラレーターグループのEコマース分野で、みずからの起業経験も踏まえて大活躍。そして2年後の2000年にはマッキンゼーを退社し、満を持してオイシックスを創業する。
2017年に「大地を守る会」と経営統合。翌年には「らでぃっしゅぼーや」をグループ化し、現在のオイシックス・ラ・大地に社名変更。2024年にはシダックスを買収して、企業グループとして一層のスケール化を図っている。
では、企業進化という視点から、同社の過去・現在・未来を展望してみよう。
まず、同社の経営理念に注目したい。同社は、「これからの食卓、これからの畑」というフィロソフィーをホームページに掲げる。そしてそこに込めた思いを、次のように語る。
・よい食を作る人が、報われ、誇りを持てる仕組みを構築します
・食べる人と作る人とを繋ぐ方法をつねに進化させ、持続可能な社会を実現します
・食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決します
・私たちは、食のこれからをつくり、ひろげていきます
これがいまの同社のパーパス(志)である。筆者がパーパスの3要件と説いている「ワクワク」「ならでは」「できる」が、見事に織り込まれている。
同社では、このパーパスを、6つの「約束」に因数分解している。「Delicious(おいしさ)」「Enjoyable(楽しさ)」「Healthy(健康)」「Easy(簡単)」「Credible(信頼)」「Social(社会との関わり)」の6つだ。同社ではこれらを略して、「DEHECS(デヘックス)」と呼ぶ。