「ベストを尽くすな」
オイシックスの“行動規範”の真意とは?

 しかも、それを一朝一夕で実現してきたわけではない点に、注目したい。最初は「信頼」、次に「簡単」、そして社会課題解決。それは、「守破離」の3つのステップととらえることができる。オイシックス・ラ・大地は、四半世紀という時間の中で、進化のプロセスを着実に歩んできている。ここに、シン日本流を志向するうえでの重要なヒントが潜んでいるといえよう。

 パーパスそれ自体は、未来の夢にすぎない。現実を未来に近づけるためには、日々の実践が求められる。そこでは理想(パーパス)ではなく、より現実に即した原理原則(プリンシプル)の実践がカギを握る。

 同社では、自社独自のプリンシプルを、社員一人ひとりが大切にしている。「ORDism(オーディズム)」と呼ばれる行動規範だ。ORDは、言うまでもなくオイシックス・ラ・大地の略称である。そのイズム(哲学)は次の7つに集約される。

(1)ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ
(2)早いもの勝ち、速いもの価値
(3)お客さまを裏切れ
(4)サッカーチームのように
(5)当事者意識、当事者行動
(6)強さの源泉は成長力
(7)前例はない。だからやる

 常識を超えた、オイシックス・ラ・大地らしさ満載である。どれもあえて解説は不要かもしれない。ただ表面的にとらえるのではなく、深層の含蓄を噛みしめなければならない。

 たとえば最初の項目は、次のように理解されなければならない。

・ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ(Mission is Possible)

 ベストを尽くしても、ミッションを成し遂げることができないとプロフェッショナルとはいえない。メンバーは、プロフェッショナルとして、それぞれのミッションを成し遂げるよう活動する。

 もちろんベストを尽くす努力はとても大事であるが、努力の積み重ねの先にミッションの達成を常に見据え、ゴールから逆算した計画に基づいて活動する必要がある。

 一人ひとりのメンバーのミッションはチームのミッションの分解である。そのため誰か一人のメンバーがミッションを果たすことができなければ、チームの勝利はおぼつかない。

 同時に、どのように動けばミッションを成し遂げるための活動を効率よく実行することができるか考え、常に生産性を向上させるチャレンジをすることも必要である。生産性が低ければベストを尽くしてもミッションを成し遂げることはできない。各メンバーが責任感と自主性を持って活動し、ミッションを成し遂げるのが、ORD流である。