一流とされる人たちは、どうやって謙虚さを文面で出しているのか?
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

知的正直な人が文章で表現する3つのこと
これまで1000人を超える一流の経営者や専門家、アーティストなどを取材してきた中で、共通して見られる特徴があります。それが「知的正直さ」です。
知的正直さとは、自分の知識の限界を認め、間違いを恐れずに誠実に向き合う姿勢のこと。
本当に優秀な人ほど、自分が知らないことを素直に認め、常に学び続ける謙虚さをもっています。また、相手への敬意を忘れず、感謝の気持ちを大切にします。これは単なる礼儀正しさではなく、真の知性の現れです。
では具体的に、知的正直さを備えた人は、文章上でどんな表現をしているのでしょうか。
①自信のなさや葛藤を吐露する
本当に頭のいい人は、自分の考えに100%の自信をもっていません。常に懐疑的で、よりよい答えがあるのではないかと模索しています。
だからこそ、文章でも「私にはまだわからないことが多いのですが」「間違っているかもしれませんが」としっかり表現します。
また、ある事柄について決断を下す前の葛藤や揺れ動く心情を赤裸々に書くこともあります。
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例
この問題については、正直自信を持って言えることは少ないです。Aという意見もあるでしょうし、他方ではBという考え方もあるでしょう。ただ私自身、現時点では~~というのが正直なところです。
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②相手へのリスペクトを忘れない
知的正直さのある人は、読み手に敬意を払い、リスペクトを忘れません。上から目線になることもなければ、マウンティングすることもない。あくまで対等な立場から、ていねいに語りかけます。読み手の感情を逆撫でしないよう、細心の注意を払って言葉を選んでいるのが伝わってきます。
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例
この問題に関しては、さまざまなご意見があるかと思います。私見を述べさせていただくとすれば~~といったところですが、みなさまはどのようにお考えでしょうか。異なる視点からのご意見をいただければ幸いです。引き続き、オープンな議論ができればと思います。
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③「ありがとう」が多い
一流と呼ばれる人の文章には「ありがとうございます」がひんぱんに登場します。言い換えれば、感謝の気持ちを忘れない。読み手はそんな相手の人となりを文章から感じ取り、好感を抱くわけです。返信の最初が「ありがとうございます。」から始まる人も多いですね。
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例
今回は私の拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。至らない点も多々あったかと思いますが、少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。忌憚のないご意見を賜れましたら、今後の糧にしてまいりたいと思います。重ねて御礼申し上げます。
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本物の知性とは、ただ博識であるだけではなく、謙虚であり、人を思いやる心を持ち合わせていることである――。それは文章からも十分に伝わってきます。
そして知的正直さは、チームで結果を出すうえで欠かせない要素でもあります。
みなさんの周りに知的正直さが足りない人がいたら、ぜひこの項目に付箋を貼って、本書をさりげなく手渡してみてください。
自分のことだと気づいてもらえないかもしれませんが……。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。