ホストが行っている
「営業時間外労働」

 ホストは己の身体一つで始められる代わりに、営業時間外の労働、複雑な感情労働、そして肉体労働が必要とされることを述べてきた。ここで、最初の「営業時間外の労働」について、ホストの活動はどこまで広がっていくのか、詳しく見ていきたい。

 ホストの店舗外の営業活動で多いのは食事やバーでの飲みだが、時には客の家に行く、自分の家に呼ぶ、旅行に出かけるなど、時間を使って客をつなぎ止める。

 筆者が歌舞伎町に住んでいたときは、歌舞伎町のホストが「交通費が安上がりでラッキー!」とばかりに初回後でも家に訪ねてきた。

 歌舞伎町の自宅でしたことと言えば、担当と複数ヘルプとの手巻き寿司パーティー、ジブリ鑑賞会、あとはゲームの桃鉄やパワプロだろうか。手料理が得意なホストに家政婦よろしくたくさん食事を振る舞われて健康になったこともある。

 一方で、歌舞伎町から離れている客の自宅に足を運ぶホストもいる。

 筆者が湘南台(神奈川県藤沢市)に住んでいた大学時代、片道1時間以上をかけて自宅まで来たホストが4人ほどいた。

 このように、ホストのやる気がある限り、物理的な活動範囲はどこまでも広がる。店内の接客だけでは、大金を落としてもらい、客の誇示的消費と承認欲求を満たすことが難しいからだ。

 ホストは客の1人ひとりに対して「好きじゃなきゃここまでしない」「他の子にはこんなことしていない」といった特別感を演出することを余儀なくされるため、遠出や自分の家に入れるといった行動を取るのである。

 まだあまり金を使っていない客候補を既存客として確保するために先行投資として「育て」、ここで女性がホストの虜になると、多額の金銭をホストに投じるようになる。

 そのためホストは、客に対し「ホストとしての自分」と「男としての素の自分」の二面を使い分けて巧みに接するのだ。