肉体も精神も消費して
売上に変える
女性に特別感を演出する営業手法の最たる例が、自分の身内を紹介することだ。ただ、「彼女として親に紹介されたのに別に彼女がいて、自分はただの営業で金ヅルでしかなかった」という話もある。
このように、時にホストは己の売上のために、自分の身内も社会関係資本(人と人の関係性による資本)として投じることがあるのだ。
さらに、ホスト特有の営業として存在するのが「同棲営業」である。
その名のとおり客とホストが同棲する営業なのだが、彼女として接する「本営」でありながら一緒に住む、同棲していて肉体関係はあるが本営ではない、本営で一緒に住んでいるが月の半分以上は地方の風俗で働いているため一緒にいない、などさまざまな捻れた関係性が生まれる。
「同棲は後輩には勧めないですね。その子が好きとか、金がなくて家が欲しいとかなら仕方ないけど、売上は上がらない。女の子からの束縛が強くなるし、その子がいないとダメという共依存的な関係になりやすい。
女の子もホストにかける金額以上の見返りを求めてきたり、喧嘩が絶えずストレスになりやすいので」(20代ホスト・月間1000万プレイヤー)
枕営業も含めて、ホストは肉体的にも精神的にも、自分のもつリソースを最大限に消費して売上に変えることができる。そうした営業をするホストが一定数いるからこそ、「ホストなんだから」と当人が望んでいない形での消費のされ方をしてしまうことも往々に存在する。
こうした「ホストとして」と「プライベートとして」の自分を往復しながら行なわれるホストの接客は、ライターで批評家の香月孝史が指摘する、「『アイドルを生きる』中で経験される『素』と『演技』の多重性がある」状態に該当するだろう(注1)。
注1 香月孝史ほか編著『アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉』(青弓社、2022年)