「ホスト」として生きるなかで、顧客の求める「ホスト」と「オフの素の状態」を行き来することで、本来のプライベートがホストとして生きるための要素として侵食されていくのは、まさにアイドルが「オフの日」を仕事の一環としてSNSに上げるようなものだ。
より稼ぐために
過剰に資本を投入
店舗外労働のホストの負担は、金銭的にものしかかってくる。
店の外で客と過ごす場合の金は基本的にホストが担うため、「ホスト」として活動する領域が広がれば広がるほど、生活における金銭的負担は重くなる。
さらに、ホストとして男を磨くべく、普段から人並み以上の自己投資が必要である。
筋トレに肌管理の美容皮膚科通い、タトゥーや美容整形による身体加工、ハイブランドの服の購入……。売れっ子ホストになると「売れっ子らしさ」を象徴するファッションや金の使い方といった振る舞いが求められる。
結果的に、多額の売上を上げても出費もかさむため、なかなか貯金ができないホストは多い。
こうした「身辺の演出」において社会学者の木島由晶は、ソースティン・ヴェブレンの言う「誇示的消費」の原理が見て取れると指摘する。すなわち、他人に見せびらかすための、周囲からの眼差しを意識した消費行動のことだ。
こうした浪費の根底には見栄や立場、他人に優越したいという意識が働いており、他者との関係性などにより、個人的な欲求というよりは社会規範のなかで「見栄を張らされてしまっている」状態であるとヴェブレンは指摘している。
つまり、ホストが浪費をして売れっ子らしく振る舞うのはホスト個人がそうしたいからではなく、むしろホスト社会の規範に従っていると言える。
そうした身辺の演出に精を出すほど、彼らの生活は「ホストらしさ」に侵食されていく。