しかし、角野氏はこれに応じず、突然大声を上げ始めた(角野氏も酔っていた様子だった)。トラブルに発展するかもしれないと考えた木村さんたちは角野氏と離れたが、同僚の阿部さんは角野氏とともに木村さんたちから離れていってしまい、少しの間、木村さんたちの視界から消えてしまった。
2人きりにするのは問題であると考えた木村さんたちが阿部さんのところへ向かうと、角野氏が横たわっていた。阿部さんが何かしたのかは木村さんたちにもわからなかったが、2人の間にトラブルがあった様子ではあった。
すると、駅員が駆けつけ「関係者は一緒に来てください」と言われ、木村さんたちは駅員室へ同行した。
その後の展開は木村さんにとってはまったく予期せぬものだった。
「お前もやったんだろ?」
長時間の取調べに戸惑うばかり
木村さんが駅員室で待機していたところ警察が来て、トラブルのことについて事情を聴かれた。警察の事情聴取には正直に応じていたものの、阿部さんと角野氏との間に何があったかを知らなかったため、話しようがなかった。
それにもかかわらず、木村さんは警察署に連行され、同僚たちとは別々に長時間にわたり取調べを受けた。どうやら警察は、木村さんが阿部さんと一緒に角野氏に暴行を行ったものと考えているようであったが、身に覚えのない木村さんは、自身が事件に関与していないこと、そもそも事件とされるものの正確な内容自体知らないこと等を説明した。しかし翌日昼頃に木村さんは逮捕された。
その後、検察官に対しても真実を述べ、容疑は事実に反することを訴えたが聞き入れてもらえずに勾留されることとなった。
木村さんは、はじめに接見に来た弁護士から容疑を認めて示談をする方針を勧められたが否認を貫いた。その後、別の弁護士の弁護活動のおかげで、逮捕から5日後、ようやく釈放された。
捜査は継続されたものの、事件から約3カ月後に木村さんは不起訴処分とされた。やっていないのであるから当然、と思われるかもしれないが、きちんと否認を貫いた木村さんの忍耐と、弁護活動のおかげであろう(残念ながら私とは別の弁護士である)。