9割超の実施企業が、なぜストレスチェックをやっているのか?に対して、「法制義務化対応」(91.4%)と回答しています(注1)。義務化されちゃったからやっているのであって、定められた範囲だけを最低限やりますけど?という姿勢が透けて見えるのです。

図1:なぜストレスチェックをやっているのか?同書より転載 拡大画像表示

あらゆる社内評価システムが
有名無実化している現実

 ストレスチェック以外にも、「エンゲージメントサーベイ(社員意識調査)」や「360度評価(上司だけでなく部下、同僚など評価者が複数人におよぶ手法)」などと呼ばれるものでも、「傷つき」が表明されたはいいが、そこで打たれる手が逆に首を絞めるような現象が起きているとも聞きます。どういうことでしょうか。

 ダイハツ工業の1件(編集部注/2023年末、34年にわたる試験実施時の不正加工・調整、試験結果の虚偽記載、試験データ捏造・改ざんなどの不正が明るみに出た事件。その後の第三者委員会の調査で、「組織風土」の問題が指摘された)のあとで、別の大手家電メーカーに20年余り在籍していた友人と話す機会がありました。

「ぶっちゃけダイハツの件って、前いたメーカーの人たちも今、戦々恐々としちゃったりするの?」

 と尋ねると意外な答えが返ってきました。「いや、あれはさすがにない」と。なるほど。

「あぁいう方向の『闇落ち』はうちはもっとずっとガバナンスが効いているからあり得ないけど、別の意味で途方に暮れている社員は少なくない」と話す友人。

 どういうことかと言うと、彼女が勤めていた業界最大手の1つのメーカーは、「管理」が行き届いた優良企業。たとえば、社員意識調査などでいえば、全世界10万人以上の従業員全員に実施するほどの力の入れようで、ゆえに「垂れこみ」口はしかとあるということ。よってそんなヤバい運営はできないというのです。

(注1)第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果 調査研究・提言活動 公益財団法人日本生産性本部(jpc-net.jp)