私たちが自覚的に「睡眠時間」として捉えている時間は、正確には「眠るために横になっている時間」であることが多いです。本記事では、この時間を「臥床時間」と表現しています。
「臥床時間」には、生物学的には睡眠していない、すなわち覚醒している時間が含まれています。この臥床時間と睡眠時間の差については後述しますが、スリープテックはこのギャップを解決する、手っ取り早い手段です。
眠る時間が国家資産
GDPと眠りの相関図
この調査のもとになっているアプリでは、「就寝時間」を「これから寝ますよ」というスマホの操作による臥床開始の意思表示から、「ただいま起きましたよ」という、やはりスマホの操作による臥床終了の意思表示までの時間として、「睡眠時間」と区別しています。
臥床時間と就寝時間は長さが逆転したり、完全に一致したりしますが、アプリの測定記録上の「睡眠時間」は「就寝時間」より確実に短くなります。
アンケートで自覚的な睡眠時間を尋ねる場合、当然ですが、回答は「睡眠時間」より「就寝時間」や「臥床時間」に近づきます。そのため、この調査では、アンケートをもとにした臥床時間に近いOECDの7時間22分より、「睡眠時間」が約1時間も短くなっているのでしょう。
時はまさにスリープテック全盛時代、世界中に利用者が拡大しています。睡眠レベルが可視化できる、いびきを録音できるのは序の口、周囲の騒音や照明についてモニタリングするだけでなく、PVT(Psychomotor Vigilance Test:精神運動覚醒検査)を用いた覚醒状態の評価や、睡眠時無呼吸症候群リスクのチェックまで、機能が広がっています。
図8は、縦軸を国ごとの平均睡眠時間、横軸を生産性指標である1人当たりGDPとして、各国の実態をプロットしています。睡眠時間が6時間45分から7時間45分の範囲で、諸国のプロットが帯状に集まっていて、平均睡眠時間が長い国ほど、国民の生産性が高いという明らかな一次相関関係があります。