壁を壊すどころか
育ててしまった日本企業

 上司は身近な存在でありながら、前提や考え方が違う、価値観や感覚が合わない存在だと思われており、経営者・役員はそもそもどういう人だかよくわからないがゆえに、いろいろな違いを感じさせる存在になっている。

書影『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』(高橋克徳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』(高橋克徳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 同期や同世代という身近な存在、先輩や後輩という関係の中でも、本音を言えないと感じている、安心して話せないという人がかなりいます。上司や経営層・役員はますます根幹の部分で相容れない、違う存在であると定義されつつあります。

 本当にこの距離感のままで、エンゲージメントを高めようといっても根幹でつながっていくことができるのでしょうか。

 そもそも組織には、いろいろな壁が存在します。その壁が、組織の流れを悪くし、時には組織の流れを分断させてしまいます。本来はそうした壁をなくし、組織全体に良い流れ、良い循環をつくりだすのが、経営の役割であり、マネジメントの役割のはずです。

 しかし、実際にはその壁をより大きな壁にしたり、さらに流れを悪くする新しい壁を生み出したり、それを放置してしまったりしている。その結果、お互いに理解し合えない、触れられない、踏み込めない領域を増やしてしまった。それがバブル崩壊以降の会社がやってきたことなのではないでしょうか。