VCのエース級人材がタッグを組んだ新ファンド
ALPHAを立ち上げたのは、大手独立系VCであるグローバル・ブレイン出身の立岡恵介氏と、大手金融系VCのSBIインベストメントやオリックス・キャピタルなどを経験した田中正人氏、そしてエー・アイ・キャピタルや三井住友信託銀行でプライベートエクイティ(PE)などへの投資に従事した川西崇弘氏の3人。
立岡氏はメルカリやラクスル、ウェルスナビなど、田中氏はビジョナルやBASE、ANYCOLORなどの投資をこれまでに担当してきた。いわば所属VC内の“エース”的存在。そこに、2人との関係も長く、機関投資家とのコミュニケーションにもたけた川西氏が参画した。3人での投資実績は、合計90社以上。イグジット(投資回収の出口)実績は40社超で、IPOだけに限定しても25社の実績を誇る。
また立岡氏と田中氏は同業者として旧知の仲であり、同じスタートアップに対して共同で出資する機会などを重ねるうちに、互いの仕事ぶりに敬意を覚えるようになったという。互いに、いつかはVCとして独立することを考えていたが、「独立するのであれば、(2人で)一緒にやりたかった」と振り返る。
目指すVC像は「大型」ではなく「少数精鋭」
立岡氏や田中氏が所属していたのは、数百億円後半から数千億円規模のファンドを運営する大型のVCだ。大型VCであれば、数多くのキャピタリストやバックオフィスの人材を擁し、ユニコーン企業やデカコーン企業を目指すスタートアップ1社に対して、100億円単位の出資を行うこともできる。一方でALPHAが目指すのは、徹底した少数精鋭の投資だという。
田中氏は「持続性のあるエコシステムを生むためには、しっかりとしたリターンを出すことができるよう、適切なファンドサイズのVCも必要」と説明する。その上で、立岡氏は「古巣であるグローバル・ブレインは日本でも最高のVCの1つ。そこを飛び出すのであれば、少数精鋭で『顔』が見えるVCにチャレンジしたいという思いがあった」と語る。
異例の「機関投資家比率8割超え」
ALPHAは「少数精鋭」と語るが、そのファンド規模はすでに100億円に達している。この規模は、独立系VCの1号ファンドとしては、2024年にヤフー元代表取締役社長の小澤隆生氏らが設立したVC・BoostCapitalなどを除いて限定的だ。
スタートアップに投資するファンドの設立は直近数年で減少傾向が続いている。スタートアップ向けデータベースのスピーダが発表したレポート『Japan Startup Finance 2024』によると、2022年には151件あった新設ファンド数は2024年には112件に減少した。また、この数カ月の間にも、「ファンド組成を計画していたが頓挫した」といった新興VCのうわさも聞こえてくる。
そんな中でALPHAには、三井住友信託銀行やみずほ銀行、福岡銀行、中国銀行、エー・アイ・キャピタルをなどの金融機関や機関投資家が出資をした。事業会社なども出資するが、現時点でファンドの約8割が機関投資家からの資金だという。
大手金融機関や機関投資家は、「公的な性質」を持つ資金を運用しているため、実績の評価が難しい新興VCの、さらに1号ファンドへの出資には消極的なのが一般的だ。立岡氏は「GP3人のこれまでの仕事を評価していただいた結果。ここからがALPHAとしての評価になると考えている」と語る。